その表現は「ウォッシュ」?サステナビリティ関連用語で気をつけたいキーワード4選

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「エコ」や「グリーン」など、環境に配慮していることを示す表記であふれている世の中。そういったワードを使うことで意図せず「グリーンウォッシュ」や「SDGsウォッシュ」に当てはまることはご存じだろうか。ウォッシュとは、環境に配慮しているように(SDGsに取り組んでいるように)見せかけているが、実態が伴っておらず、環境意識の高い消費者に誤解を与えるようなことを指す言葉だ。

企業がブランドイメージを向上させたいという理由でありもしない“強み”をアピールした結果、NGOなどから「これはウォッシュだ」と批判されることがよくある。表現一つでブランド価値を落としてしまう可能性があるのだ。米美容誌アルーアも、2021年4月にはサステナビリティに関連するいくつかの表現を廃止し、「環境に対してごまかさず真剣に向き合う」と宣言している。

今回は、企業のコミュニケーションにおいて気をつけたいキーワードを4つご紹介する。

01. エコ

さまざまな商品に書かれている「エコ」の2文字。しかし、「エコ」と掲げることで実際に何がどのくらい環境にやさしいのかを不透明にするリスクがある。2009年にヨーロッパのマクドナルドが赤と黄色のおなじみのロゴを、少しでもエコ・フレンドリーに見えるようにと、緑と黄色に変更し、批判を受けたことがあった。

たとえばアパレルブランドで、「地球のために行動しよう」「環境に優しく」といったメッセージでエコバッグを販売していたとしても、それだけではバッグの素材がポリ袋と比べて環境負荷がどの程度抑えられるものなのか、何回以上の使用でポリ袋より環境負荷が減らせるのか、といった地球にやさしいエコバック使用の条件が不明瞭である。そのアパレルブランドがサステナブルな方向に転換していくという意識がエコバッグに表されているのかもしれないが、具体的に何が環境に良いのか分からないままにそういった商品を販売するのであれば、消費者の誤解を招くことになる。

環境を再生する仕組みが設計された製品でなければ、どんな製品であっても何らかの環境負荷を生み出している可能性が高い。この言葉を使うのであれば、何を根拠にどの程度エコなのかを明確に説明することが大切だ。

02. 生分解性プラスチック

今、世界で脱プラスチックに向けた動きが加速している。丈夫で軽く、透明で安価なプラスチックの利点は大きく、プラスチックの代替品を見つけることが難しいケースも多い。そんな中で注目を集めるのが、生分解性プラスチック。生分解性プラスチックは植物由来の原料から製造されているため、使用後は自然に還すことのできる素材だと一般的には考えられている。「たとえ海に流れ着いてしまっても自然に分解されるから大丈夫」と考える消費者も多いのではないでしょうか。

しかし、市場に流通している生分解性プラスチックのすべてがそのような素材ではない。「生分解性プラスチック」を定義する明確な基準値が存在せず、実際に生分解性プラスチックと呼ばれていても、海中では分解されなかったり、埋め立て材となってから分解に100年近くの時間を要したりと、素材によって分解される条件は様々なのが現状だ。

オーストラリア連邦政府は、2021年3月に国家プラスチック戦略(National Plastics Plan)を発表した。具体的には、ポリスチレン(発泡スチロール)の梱包素材への使用を2022年7月まで、同素材の食品や飲料容器への使用と、ポリ塩化ビニル製の商品ラベルを2022年12月までに廃止する予定である。それに加えて、生分解性プラスチックについても2022年7月を目処に段階的な廃止を進める方針だという。生分解性プラスチックもプラスチックと同程度に環境への影響があると捉えているためだ。

「生分解性プラスチックだから環境に優しい」という認識に誤解のないよう、分解される条件や適切な廃棄方法を製品に明記することが大切だ。

生分解性プラも段階的廃止へ。オーストラリアの国家戦略

03. リサイクル素材

リサイクルプラスチックからできた服や容器の素材の説明は、適切にされているだろうか。プラスチックでできた服は、洗濯するたびに微量のプラスチックが流れてしまい、海に流れ着いたマイクロプラスチック全体の約35%を占める。プラスチックをリサイクルして服を作っても、マイクロプラスチックとして海に流れていってしまうのだ。

リサイクルプラスチックを使用した容器も、耐久性の補強のため新品の素材を含めることもある。このような、リサイクル素材を使うことによるトレードオフも考慮して顧客に伝える必要がある。

また、服の例ではプラスチックをリサイクルした素材を活用しても再び海に流出してしまうリスクを踏まえ、どうすればマイクロプラスチックが海に流出しにくくなるか、対策を考えていくことも求められている。洗濯時に衣類からのマイクロプラスチック(マイクロファイバー)の流出を極力防ぐ洗濯ネットが販売されており、そういった商品を活用する方法や、一度にまとめて洗う、低温・時短の洗濯方法にするなど、洗い方の工夫によってもマイクロプラスチックの流出が防げる。プラスチックを使った素材を用いた服を販売するからこそ、こういった対策についても発信する必要性がある。

04. SDGs

SDGs(持続可能な開発目標)が世間に浸透してきた今、自社の製品とSDGsを結びつけ、会社のホームページ上に公表する企業が増えている。これまで提供してきた製品やサービスを、チェックリストのようにSDGsのゴールに結びつけるのみに留まらず、どれだけの人に、どのようなインパクトをもたらしているのかを定性的・定量的に明記する必要がある。情報源のないあいまいな表現を避けることで、より正確な判断を消費者に促すことが誠実だ。

ここで注意したいのが、SDGsのうち1つのゴールに該当しても、他のゴールに違反する可能性があるということ。たとえば、水処理施設を途上国の水のない地域に作ったとしても、そのために森林を多く伐採したのではSDGsのゴール15「陸の豊かさも守ろう」を破ることになる。現地の人々の生活を改善することだけを考えるのではなく、どうすれば地球環境も守りながら現地の人々の生活を改善できるか、多角的な視点を持って考えることが重要である。

ウォッシュを回避するため、根拠を持って表現する

どのキーワードにも共通して言えることは、何が環境に良いのか、根拠を持って表記することの重要性だ。

また、環境に良いとされるものであっても、環境負荷がかかってしまう側面は多少なりともあり得る。良い側面ばかりを強調するのではなく、その点も併せて公表し、環境負荷を削減するためのさらなる方法を考えていくことが、これからの企業では求められていく。

【参照サイト】Microfiber release from real soiled consumer laundry and the impact of fabric care products and washing conditions

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「IDEAS FOR GOOD Business Design Lab」の記事の一部改変版となります。

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