子供が自分の中の「不安」や「恐怖」と向き合えるモバイルゲーム

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イギリスに住む11歳の女の子マシーは、登校や、習い事の体操、友達の家での外泊に大きな不安を抱いていた。親は、家では陽気でおしゃべりな娘の様子がおかしいことを危惧し、専門家に看てもらうことにしたが、一時的に良くなってはまた症状が出るといった具合だった。

子供のころに漠然と感じる不安や恐れは、なかなか言語化ができない。学校や習い事で何か嫌なことがあっても、うまく親に伝えることもできない。そんな経験をした人は少なくないのではないか。

イギリス保健省の調査では、5歳から15歳の子供の9人に1人は、少なくともひとつの精神障がいを患っているとされている。マシーのような症状を持つ子供の数は増加傾向にあり、別の10歳の少女が11か月にわたり、ヘルスケアサービスの順番待ちとなるケースもあるという。

そこで登場したのが「Lumi Nova: Tales of Courage(ルミノヴァ・テールズオブカレッジ)」と呼ばれるゲームだ。スマートフォンやタブレット向けのゲームなどのデジタル治療で子供のメンタルヘルスケアを行うイギリスのBFB Labs社が、レディング大学やMindTech UKと共同で開発した。開発にあたり、イギリスの国民保健サービスが96万4,300ポンド(約1億5,000万円)の資金を提供している。

Google PlayやApp Storeなどからダウンロードできるこのゲームでは、銀河にある星々への旅に繰り出すプレイヤーが、他のキャラクターと出会ったり、アイテムを集めたりする過程で、自分の中の恐怖や不安と向き合い、克服するきっかけが用意されている。

Tales of Courage

ミッションをクリアしてアイテムをゲットできるシステム。

例えば「自分の家以外で寝られるようになる」「学校の課題を間違えても気にしない」「親と一緒でなくても、家で落ち着いていられる」「ひとりで寝る」「人前で話す」「友達を作る」「学校に行く」「人前で飲食する」といったミッションがあり、現実でも起こりうる状況にデジタル上で晒され、ミッションをクリアすることで、ゲーム内の報酬を獲得。そのときの心境についても尋ねられて、プレイヤーは自分自身の感情を振り返ることで勇気づけられる。

Tales of Courage

「このミッションに挑戦するのに、どれくらい不安になりましたか?」と自分との対話を促してくれる。

11歳の女の子マシーの母親は「プレイを始めてからわずか数週間で、大きな改善に気がつきました」と話す。実際に不安が軽減される効果があるという結果が出た。

BFB Labs社は、メンタルヘルス疾患の半分は14歳より前に始まり、不安障害のある若者の最大70%は、治療を受けていないとウェブサイト上で発表。治療せずに放置すると、子供の発達や教育の成果、生活に深刻な影響を与える可能性があると世界保健機関(WHO)は警鐘を鳴らしている。

テクノロジーは若者の心を不安定にする要素もある、という主張もある。しかし使い方次第では、手が行き届かないメンタルヘルスケアを補完するのにも大いに役立つようだ。

【参照サイト】Lumi Nova: Tales of Courage. Enabling young people to self-manage their worries
Edited by Kimika

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