“海育ち”のレタスを食べる日が来る?世界初、食の供給を助ける「水中菜園」

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記録的な猛暑や巨大な台風、これまでになかった規模の山火事。地球温暖化の影響による異常気象や自然災害は、年々発生の頻度が増えている。これらは私たちの生活のあらゆる面に影響を及ぼす。気象条件に左右されやすい穀物の生産量も、そのひとつだ。(※1)

実際に、気温の上昇や天候の変化による不作、農作物の成長を阻害する作物や害虫の出現などが観測されている。(※2)世界の人口がますます増加していることもあり、食の供給システムの持続可能性が問われている。

そんななか、このような食に関する課題を解決する可能性を持つアイデアがイタリアで生まれている。陸上植物を水中で生産する世界初のプロジェクト「Nemo’s Garden」だ。気候変動によってイタリアの一部の地域が乾燥して農業ができなくなる可能性を踏まえて、食料供給の多様性を実験するためにイタリアの企業「Ocean Reef Group」が立ち上げた。

イタリア、ノーリの沖合に設置された水中菜園「Nemo’s Garden」は、大きな風船のような6つの透明なプラスチックのドームで構成されている。それぞれのドームはは水面下約15〜36フィート(約4.5m〜10m)の深さに浮かんでおり、ロープやネジで海底に固定されている。ひとつのドーム内には90以上の苗床が備えられ、レタスやバジルといった植物や野菜を栽培することができる。

この水耕栽培では、植物の根に栄養素や水分を供給する肥沃な土壌を必要としないことが特徴だ。つまり、干ばつや砂漠化などにより陸上での農業が難しくなっても、将来的には海の中で植物を生産することが可能になるかもしれないということだ。

さらに、この水中菜園のプロジェクトは、長期的な視点で環境に悪影響を与えない農業の形態を目指しているため、太陽の光と、海水淡水化による新鮮な水から生み出された再生可能なエネルギーをシステムを動かすために使用している。システムは24時間365日監視され、細かいデータの計測が行われているため、最適に管理された環境下で植物を生産することができる。

今まさに行われている世界で初めての水中菜園の実験。もちろん、地球温暖化による気温上昇や気候変動は最小限に抑えるように取り組みを行なっていかなければならない。しかし、食の生産方法が多様化することは、イタリアだけでなく、世界のあらゆ場所で貧困や飢餓に苦しむ人々の救いになる可能性もある。この水中菜園の今後の広がりに期待したい。

※1 地球温暖化による食料生産への影響
※2 CLIMATE-SMART AGRICULTURE

【参照サイト】Ocean Reef Group
【参照サイト】Nemo’s Garden

Edited by Motomi Souma

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