子どもを産むかどうか、いつ何人の子どもを持つか、どんな避妊法を使うかなどの判断は、誰かに強制されるのではなく、自分で決める――。
国際社会ではこれらの権利を、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(Sexual Reproductive Health and Rights、以下SRHR)と呼ぶ。日本語では「性と生殖に関する健康と権利」とされ、基本的人権のひとつと考えられている。
SDGsのゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」のグローバル指標5.6.1にも、「性的関係、避妊、リプロダクティブ・ヘルスケアについて、自分で意思決定を行うことのできる15歳~49歳の女性の割合」が盛り込まれている。「パートナーが避妊をしてくれない」「望まない妊娠で中絶するしかなかった」など、自分の意思で決めることができない女性が、世界には少なからずいるのだ。
そんな中、フランス政府は、2022年1月1日からピルや避妊リングなどの避妊法を、国内の約300万人におよぶ25歳以下の女性を対象に無償化すると発表した。また、避妊のために医療機関を訪れた際の受診料や年1回の検診費用にも健康保険が適用される。今回、2,100万ユーロ(約27億3,000万円)の予算を確保し、対象年齢をこれまでの18歳以下から大幅に拡大。若い女性の望まない妊娠や中絶、それに伴う身体や精神の負担を減らすべく、国をあげてサポートする。
対象年齢の拡大が決まった背景には、国内の若者による避妊具の利用率低下がある。フランス政府は、主な原因は経済的理由だとし、避妊もしやすい環境を整えるため、今回の決定に至った。
実はフランスでは2020年、若い世代の人工妊娠中絶をなくすために避妊法無償化の対象を15~18歳から18歳以下に拡大していた。今回、再度対象を広げることで、より多くの女性が望まない妊娠を避けられるだけでなく、自分に合った避妊法を費用の心配なく選べるようになる。さらに、日常生活に支障をきたす生理痛やPMSをピルや避妊リングなどで緩和できることは、女性のQOLの向上にもつながる。
フランスでSRHRを尊重する政策が支持されるのは、政府が国民の声に耳を傾けているからだけではない。社会全体が望まれない妊娠によって一番傷つくのは当事者であると理解し、SRHRを尊重するために必要な情報や手段を提供するという意識を持っているからだ。
では、私たちのいる社会でSRHRが共通認識となるためにはどのようなことが必要だろう。まずは、身近な人と生理や避妊について語ることから始めてみるのもいい。「語るべきではない」「変えるべきではない」という価値観を変える一歩が、今求められているのではないだろうか。
【参照ページ】Dès 2022, la contraception sera gratuite pour les femmes de moins de 25 ans
【参照ページ】SDGグローバル指標 5: ジェンダー平等を実現しよう|外務省
【参照ページ】リプロダクティブ・ヘルス&ライツライトユニット|京都大学
Edited by Kimika