気候危機をどう伝える?「影響力のあるメディア」になりきるノベルゲーム

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気候変動や異常気象をテーマとした小説や映画は、気候フィクション(Cli-Fi)と呼ばれ、気候変動の進行と共にSFジャンルの中でも存在感を増している。たとえば、ジブリ作品『風の谷のナウシカ』もその一つ。そうした作品の多くは気候変動が進行した未来を仮想的に描き、聴衆の環境問題への意識を高める役割を果たしている。

そんな中、小説や映画以上に環境問題を考えることができると評判のCli-Fiツールがある。オンラインゲーム「Survive the Century」だ。これは、気候変動の影響に適応するために2021年から2100年の間に人類が直面する政治的、環境的、社会的な選択をテーマとした分岐型のストーリーゲームである。ゲームの制作には多くの科学者、ライター、イラストレーターが参加しており、ゲーム内で語られるシナリオは実際の科学的根拠に基づいている。

オンラインゲーム Survive the Century

プレイヤーは「世界で最も影響力のある新聞社の編集者」という設定で、国際社会が直面する多くの問題について異なるシナリオを選択していく。一つの選択が終わる度に、「社会」「経済」そして「環境」にどのような影響が及ぶかがストーリーとして語られ、プレイヤーはメディアの立場で世の中に起こる変化のダイナミズムを体験することができる。

ゲームは2021年後期の現在を舞台に、以下のような文章からスタートする。

すでに気候危機を迎えている現在だが、世界中の政府はパンデミックを食い止めることに手を焼いている。経済的に豊かな国ではワクチン接種が完了しつつあり、国境が開かれ始めてたものの、貧しい国ではワクチン接種が進まないことで経済格差はさらに広がっている。パンデミックを抑え込むためには、世界全体でワクチン接種を完了する必要がある。

選択肢には以下が並ぶ。

  • 豊かな国が接種の進んでいない国に対してワクチンを無償提供する
  • 世界の富裕層がワクチンを寄付する
  • グローバルワクチン財団が設立され、各国がGDPの1%を寄付する合意を行う
  • そもそも、ワクチンはすべて陰謀である

試しに「グローバルワクチン財団が設立され、各国がGDPの1%を寄付する合意を行う」を選択してみると、「パンデミックを前に、生活を維持するのが最も困難である層を世界中で保護する目途が経ちました」から始まる前向きなメッセージが表示され、この選択肢に実行可能性があり、優れた結果をもたらすであろうことが示唆された。

また、プレイ画面上には、3つの重要な指標を示すバロメーターが年代と共に表示される。

ゲーム内のバロメーター

  • 対立:国家間や階級、世代間などの対立。選択肢にそうした火種が含まれているほど、バロメーターが上がる
  • 気温:温室効果ガスを大量排出するような政策がなされると、バロメーターが上がる
  • 経済:国家の経済が成長すれば、矢印の方向が変わる

実際にプレイしてみると、それぞれの選択肢が地球環境や経済活動に及ぼす影響に思考を巡らせたり、それぞれの利害関係者の反応を想像してみたりと、これからの未来に起こりうる諸問題を改めて自分の頭を使って深く考えることができた。

また、ストーリー中やあとがきの文章には示唆に富んだ鋭いコメントが多く、ゲームを通して未来を疑似体験する前に持っていた気候変動に対する漠然とした虚無感が少し薄れるのを感じることもできた。

「劇的に異なる未来に繋がるような決断が、まだ沢山ある」。これは「Survive the Century」のホームページに書かれた文章だ。どのようなプロジェクトの成功にも欠かせないのは、まずそこへ至るまでの一連の道筋を想定することだ。ぜひ一度「Survive the Century」をプレイし、自身の気候アクションに弾みをつけてみてほしい。

【参照サイト】Survive the century
Edited by Kimika

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