ウィーンの美術館、SNSのヌード検閲から逃れるためアダルトサイトで作品を公開

Browse By

新型コロナの蔓延防止のため、美術館がこぞってインターネットで作品を鑑賞できるようにしている。家にいながらさまざまな美術作品を楽しめることは素晴らしいが、その裏でネット上への作品公開に苦労している美術館もあることはご存知だろうか。オーストリア・ウィーンのグスタフ・クリムトやエゴン・シーレといった19世紀末を代表する芸術家たちの作品は、人の裸体を描いたものも多く、FacebookなどのSNSでは「ポルノ」「不適切なコンテンツ」として規制されてしまうのだ。

これまで普通に公開されていた作品が突然見られなくなったり、アカウントごと停止されたりといったことも、しばしばある。ウィーンを代表する芸術家たちの作品が見られなくなり、芸術好きの人々や、ウィーンの人々はがっくりと肩を落とした。過去には、ウィーンの美術館の一つであるレオポルド・ミュージアムが、次のような皮肉じみたキャンペーンを行ったことすらあった。

「ごめんなさい、100年経った今でも、未だに大胆すぎて規制されてます!(Sorry, 100 years old but still too daring today!)」。

このような状況を打開すべく、オーストリアのウィーン観光局は、市内の美術館の作品をサブスク型SNSのOnlyFans(オンリーファンズ)へを公開することを決めた。OnlyFansは特段アダルト向けに作られたサイトではないが、性的コンテンツに寛容であり、ポルノ女優やセックスワーカーたちが「クリエイター」としてお金を稼ぐ場として有名だ。この「ポルノのサブスク」には1億3,000万人の利用者がいるため、影響力も絶大。他のヌード規制をしているSNSではできない、大胆な取り組みだ。

OnlyFansのウィーン観光局のアカウント紹介文では、「ウィーンには、世界で最も有名な芸術作品が複数あり、その多くにはヌードが含まれています。OnlyFansを使うことで、これらの芸術作品にふさわしい自由を与えたいと考えています。」とある。これを公的な機関である観光局が行っているというのは興味深い。

ポルノ画像と芸術的または非性的ヌードの明確な線引きは難しい。過去に物議を醸したSNS検閲としては、ベトナム戦争で9歳の女児が黒煙と重装備の兵士を背後にして全裸で逃げ惑いながら泣き叫んでいる写真「ナパーム弾の少女」を、Facebookは児童ポルノだとして度々、削除したことがあげられる。しかし、ピューリッツァー賞を受容した歴史的に重要な作品であり、市民の抗議もあいまってついにFacebook側が折れて掲載を認めた。SNSクリエーター向け動画共有プラットフォームVimeoでは、ポルノは禁止しながら、「芸術的または非性的なヌード」は容認している。

そのような社会秩序と表現の自由が摩擦を起こしている世の中で、アートは火傷を負いつつある。音楽と芸術が栄えた文化都市ウィーンは、固定観念にとらわれたり、見て見ぬ振りをしたりすることなく、市としてアダルトSNSに踏み込んででも、過去の素晴らしいアーティストたちを認め救済した。大胆に行動に移して、芸術を優先して庇護する都市の明確な姿勢を打ち出している。

【参照サイト】OnlyFans – Vienna Tourist Board
Edited by Kimika

FacebookTwitter