「汗」で充電できる超小型バッテリー、シンガポールの大学が開発

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気候変動対策のため、化石燃料に代わる持続可能な発電法が求められている現在。Ideas For Goodではこれまでに「海水で充電できるランタン」など、身近にある資源を有効活用した発電の事例を紹介してきた。

海水で充電できるランタン「WaterLight」

今回ご紹介するのは、このほどシンガポールの南洋理工大学(NTU)が新たに開発した発電技術だ。発電に使うのは、なんと私たちの体から出る「汗」である。

銀を含んだ繊維がプリントされた新型バッテリーは、2 cm四方の薄い生地状。伸縮性があり、腕時計やリストバンドに装着することで、肌に密着するようになっている。バッテリーに含まれる銀が、汗に含まれるイオンと酸とともに化学反応を起こすことにより電気が生成される仕組みだという。

実験では、被験者がバッテリーを手首に装着し30分間エアロバイクをこぐことで発汗し、「4.2V・3.9mW」の電力を生むことに成功した。これは、「センサーで計測したデータをスマートフォンに転送できる」程度の電力である。

このバッテリーは重金属や有毒化学物質を含まないため、有害な電子廃棄物の削減にもつながるのも利点だ。

従来の発電は、火力発電所や原子力発電所といった巨大なインフラを必要とするものが大半を占めていた。クリーンエネルギーである水力発電や風力発電、地熱発電もそれなりに大掛かりな土地や設備が必要だ。そのため公営企業や大企業が中心になって取り組まれてきた経緯がある。

しかし、現在では個人の自宅のソーラーパネルで発電した電力が販売できるようになり、電力の分散化が進んでいる。自宅での発電にとどまらず、人の体の発汗という、これまで活かされていなかった資源に着目した発電法が生まれることで、電力の供給源はさらに多様になっていきそうだ。

あまりにも身近で気が付かなかった「汗による発電」という発想は、資源が枯渇している都市国家シンガポールならではの持続可能な好例だ。「灯台下暗し」というのは、まさにこのことを言うのだろう。

【参照サイト】Break a sweat to recharge this battery
【関連ページ】ウェアラブルデバイス
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Edited by Yuka Kihara

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