海洋プラスチックごみ問題・気候変動問題・諸外国の廃棄物輸入規制強化などへの対応を契機として、国内におけるプラスチック資源循環を一層促進する重要性が高まっている。そこで政府は、プラスチック使用製品の設計から廃棄物処理に至るまでのライフサイクル全般で、あらゆる主体における包括的なプラスチック資源循環の取り組み「3R+Renewable」を促進する措置を講じる。
まずは1月14日、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック新法)」を4月1日に施行することを閣議決定した。同法案は2021年6月に国会で可決され、8月に指針が発表されていた。
これにより、コンビニ・飲食店・宿泊施設・クリーニング店などに、フォーク・スプーン・ナイフ・ストローなどの特定プラスチック使用製品の廃棄物排出抑制を目指すことが義務化される。前年度提供した特定プラスチック使用製品が5トン以上の事業者が対象で、勧告・公表・命令に従わない事業者には50万円以下の罰金が科される。
同法の概要は、以下のとおりだ。
排出抑制されるプラスチックの種類とは?
特定プラスチック使用製品
フォーク、スプーン、ナイフ、マドラー、ストロー、ヘアブラシ、くし、カミソリ、シャワーキャップ、歯ブラシ、ハンガー、衣類用カバー
対象:前年度提供した特定プラスチック使用製品が5トン以上の事業者
特定プラスチック使用製品の提供量が多く、使用合理化が特に必要な業種であるコンビニ・飲食店・宿泊施設・クリーニング店などは、目標を定めて以下の措置から取り組みを選択し、廃棄物の排出抑制を目指す。
- 有償で提供する
- 使用回避を促すべく、ポイント還元などの景品を提供する
- 消費者に使用についての意思を確認する
- 提供する特定プラスチック使用製品の繰り返し使用を促す
- 軽量な製品・再生可能資源や再生プラスチックを使用した製品を提供する
- 適切な寸法の特定プラスチック使用製品を提供する
- 繰り返し使用が可能な製品を提供する
その他、プラスチック新法の注目ポイント
プラスチック使用製品設計指針
主務大臣は、製造事業者などが努めるべき環境配慮設計に関する指針を策定し、指針に適合した製品であることを認定する。国は認定製品を率先して調達し(グリーン購入法上の配慮)、認定製品の調達や使用を促進する。
市町村の分別収集・再商品化
市区町村は、プラスチック製容器包装やプラスチック使用製品を一括して分別収集し、市区町村と再商品化事業者が連携して再商品化計画を作成する。
製造・販売事業者などによる自主回収および再資源化
自ら製造・販売したプラスチック使用製品が使用済みとなったものについて、製造事業者などの自主回収・再資源化事業計画を国が認定する。
排出事業者の排出抑制および再資源化など
排出事業者が排出抑制や再資源化などに取り組む基準を策定する。
まとめ
同法のそのほかの概要および具体的施策は、プラスチック使用製品設計指針の策定、市町村によるプラスチック使用製品の一括分別収集、製造・販売事業者などによる自主回収と再資源化、排出事業者による排出抑制と再資源化である。
世界のプラスチックの9%のみがリサイクルされ、毎年1,100万トンのプラスチック廃棄物が海洋に流出しているといったプラスチック汚染の問題が、同法の施行の背景となっている。この問題に対処するべく、EUをはじめさまざまな国が取り組みを進めているとともに、プラスチックに関する国際合意を求める動きも活発化している。今後の世界におけるプラスチック対策の動向が注目される。
【参照サイト】プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令等の閣議決定及び意見募集の結果について
【関連記事】使い捨てフォークやスプーンを含むプラ使用製品、有償化などの対策を2022年4月から導入
【関連記事】プラスチック新法案が2022年4月に施行へ。ライフサイクル全般でプラ資源循環促進を目指す
※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「Circular Economy Hub」からの転載記事となります。