東西ヨーロッパの中央部に位置する国、ポーランド。米シカゴ大学エネルギー政策研究所(EPIC)の2021年の報告書によると、同国はヨーロッパで最も大気汚染が深刻な国だという。
同報告書は、もしポーランドが、世界保健機関(WHO)が定める基準値を満たす水準にまで大気汚染を改善すれば、同国の首都であるワルシャワの住民の寿命が11か月延びるとしている(※1)。大気汚染が人体に及ぼす影響は、決して小さくない。
そんななか、同国のAGH科学技術大学の研究者たちは、独自の衝撃波発生装置を使って、汚染された空気を空高く押し上げる試みを行っている。可燃性ガスのアセチレンと空気を混合して爆発させ、大気汚染の原因となる粒子状物質を数百メートル上空に移動させるという大胆な取り組みだ。
粒子状物質をここまで移動させると、住民の健康に悪影響を及ぼさなくなるという。
研究者らは2022年1月、ポーランド南部のカルヴァリア・ゼブジドフスカという町で実験を行った。同地域では、冬になると住民が暖炉を使い、煙突から排出された煙が大気汚染を悪化させることが問題になっている。
研究者らによると、この装置を使うことで、粒子状物質であるPM2.5およびPM10の濃度を下げることができたという。装置を30分~1時間使うと、装置から2~3キロメートルの範囲内で、大気汚染が15~30%減少。その効果は1~3時間持続したそうだ。
装置は6秒間隔で大きな音を出すため、騒音問題が生まれる可能性はある。ただ、それでもこの取り組みを好意的に捉える住民は多く、ある住民は、部屋の空気の入れ換えもできないほど大気汚染がひどいため、取り組みに賛成しているという。彼女は、装置の音はそれほど迷惑ではなく、花火が打ち上がっているようなものだと話す。
装置を1時間稼働させるのにかかる費用は、1,000~1,500ズロティ(約3~4万円)ほど。研究者らは今後、必要な爆発の頻度や装置の稼働時間を模索するという。技術は商業的に利用されるようになるのだろうか。
※1 Europe Fact Sheet
【参照サイト】 Smog-fighting invention patented by researchers from AGH UST / AGH University of Science and Technology