「検索エンジンに興味のある言葉を打ち込もうとしたら、予測変換で出てきた」「転職のことを少し調べたら、すべてのSNSの広告が転職関連になった」といった経験はないだろうか。
これは検索エンジンの提供側が、利用者のデータや過去のサイト閲覧履歴から、気になるであろう言葉を巧みに表示する「ターゲティング広告」を使っているのだ。
多くの検索サービスは消費者に無料で提供される反面、消費者の情報を収集し、こういったターゲティング広告に利用している。このことについて、あなたはどう思うだろうか。
公正取引委員会の2021年の報告書によると、消費者の約70%はターゲティング広告を受け取ることについて「煩わしい」または「どちらかというと煩わしい」と思っている。一方で、「無料の検索サービスに広告が表示されることは仕方ない」と考える消費者も、約70%いるという(※1)。
こういった「無料だから仕方ない」という人々の認識を覆そうとしているのが、広告の出ない無料の検索エンジン「Neeva」だ。
グーグルの広告部門を担当していたスリダール・ラマスワミ氏と、ユーチューブのマネタイズ部門を担当していたビベック・ラグネイサン氏が、2021年に始めたサービスだ。
Neevaの特徴は広告ゼロであることに加えて、利用者の情報を第三者に提供しないことだ。そのため、自分のプライバシーの取り扱いに関する不安が少なくて済む。
また、Neevaでは、検索結果に自分が信頼するニュースサイトや、好きなお店などが優先的に表示されるようカスタマイズできる。過度なSEO対策が施されたコンテンツより、自分が本当に知りたい情報にアクセスしやすくなるだろう。
「広告収益を得ていないのなら、Neevaはどのように事業を成り立たせているのか」と疑問を持つ人がいるかもしれない。Neevaは無料のベーシックプランに加えて、月額4.95ドル(約600円)のプレミアムプランを提供することで収益を得るという。
どちらのプランも、2022年1月時点ではアメリカ国内で利用でき、じきに世界中で利用できるようになるそうだ。
プレミアムプランには、Neevaが主催するコミュニティに参加できたり、VPNのようなプライバシーツールを利用できたりするといった特典が付くという。広告ゼロで、第三者に情報が提供されない点は、どちらのプランでも共通している。
世界中でNeevaが使えるようになれば、あなたは今使っている検索サービスから切り替えるだろうか。
公正取引委員会が2020年に行った調査で、消費者に、広告が表示されない有料の検索サービスと、広告が表示される無料の検索サービスのどちらを利用したいかアンケートをとったところ、「広告が表示される無料のサービスを利用したい」または「どちらかといえば広告が表示される無料のサービスを利用したい」という回答が過半数に達したという(※2)。
また、「広告が表示されない有料のサービスを利用したい」「どちらかといえば広告が表示されない有料のサービスを利用したい」と回答した消費者に、月額いくらまで負担したいか質問したところ、「月額100円未満」との回答が過半数に達したという。
無料の検索サービスに慣れた私たちにとって、有料版はハードルが高いのかもしれない。無料プランの提供を続けるという、Neevaの意志を応援したい。
※1 デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書
※2 デジタル広告の取引実態に関する中間報告書
【参照サイト】 Neeva – Ad-free, private search