交通機関でのジャンクフード広告を禁止したロンドン。人々の消費行動に変化はあったのか

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10歳、11歳の子どもの45%が過体重または肥満だというロンドン(※1)。また、2021年にオープンアクセスジャーナルの「BMJ Open」で発表された研究によると、社会経済的地位が低い層や若年成人は、高脂肪・高塩分・高糖分(HFSS)な食品の広告にさらされる可能性が高いという。

不健康な食品の宣伝が、人々の食生活に影響を及ぼすと指摘されるなか、ロンドン交通局は2019年2月以降、地下鉄、バス、トラムなどを含むすべての交通機関で、ジャンクフードの広告を禁止している。

このような広告規制に効果があるのか、疑問に思う人もいるかもしれない。ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(London School of Hygiene and Tropical Medicine)が2022年2月に発表した研究によると、ロンドン交通局が規制を行うことで、同市内の世帯は、規制されていない地域の世帯と比べて、HFSS食品から摂取するカロリーが、1週間あたり約1千カロリー少なくなったという。

調査期間は2018年6月から2019年12月までで、ジャンクフードの広告が禁止される前と後の、ロンドン市内の977世帯の購買動向を調べたという。また、広告が禁止されていない北イギリスの世帯の購買動向とも比較。調査には、200万件近いHFSS食品の購買データが使われた。

研究者らによると、調査期間中、介入地域のロンドンでも対照地域の北イギリスでも、人々が購入したHFSS食品の絶対量は増加した。ただ、ロンドンのほうが北イギリスより増加を抑えられたという。

研究者らは、ジャンクフードの広告規制の効果を示す証拠が少ないなか、今回の研究は広告規制の有効性を示唆し、政策決定者に有用な知見を提供するとしている。

広告規制に一定の効果があることが示されたのは良いニュースだが、人々が購入したHFSS食品の絶対量は減っていないため、食生活を抜本的に改善するという課題は残されているのではないだろうか。

同大学院によると、今回の研究では1世帯あたり約1千カロリー少なくなることが示されたため、1世帯あたりの人数を2.6人とすると、1人あたりの減少量は385カロリーだという。これは、一般的なサイズのミルクチョコレートバー約1.5本分のカロリー量だ。

これを「大きな効果があった」と捉えるかどうかは人それぞれだが、広告が人の心に与える影響には注意したいものだ。今回はジャンクフードの広告に関する研究だったが、この知見は、アルコールやギャンブルなど、他の分野の広告にも活かせるかもしれない。

※1 Londoners buy less junk food due to ad restrictions on TfL network | London City Hall
【参照サイト】 Transport for London’s junk food advertising restrictions linked to reductions in high fat, salt and sugar product purchases | LSHTM
【関連記事】より健康な選択肢を。ロンドンが公共交通機関でのジャンクフード広告を禁止 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

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