ジェンダー不平等から美のあり方まで。国際女性デーに改めて観たい広告5選

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3月8日は「国際女性デー」。1975年、国際連合によって制定されたこの日には、世界中の多くの国々で記念行事が行われる。国や民族、言語、文化、経済、政治などの違いに関係なく、女性が達成してきた成果を認識する日である。

そんな国際女性デーは、北米とヨーロッパ全域で20世紀初頭に現れた労働運動に端を発している。当時から女性たちは、選挙権や公職につく権利、女性が働く権利、職業訓練を受ける権利、労働条件の改善など、様々な権利を訴えてきた。

そしてこの日はまた、女性の権利求めるだけでなく、第1次世界大戦に反対する場にもなった。ロシアの女性は平和運動の一環として、2月の最終日曜日に初めて、「国際女性の日」の記念行事を行い、その他の欧州諸国では翌年の3月8日頃に、女性が戦争に反対したり、他の活動家との連帯を表明したりするための集会を開いたのだ。

奇しくも、私たちは今戦争の脅威を感じている。この日が「戦争反対」という大きな意味を有していたことを思い出しながら、女性の置かれてきた状況や望ましい姿について、今一度考えてみるのはどうだろうか。

本記事では、国際女性デーに改めて観たい、国内外の広告や動画をご紹介する。これらを通して、少しでも自分や周囲の人たちとの関係を見つめ直し、より良い方向へと一歩踏み出すきっかけになれば嬉しい。

男女の不平等を問いかける動画

1. P&G『Mental Load』


スペインの夫婦5組が登場する動画。インタビュアーが、「家事を分担しているか」と質問をすると、彼らは平等に負担していると答える。しかし、夫婦はそれぞれが一週間の間に行った家事をスマートフォンにメモするよう事前に伝えられており、お互いのメモを見比べて初めて、家事の負担が女性に偏っていることに気付く。

またこの動画では、家事の負担の偏りが、女性たちの精神的な負荷にもつながっていることが描かれている。リアルなカップルの対話を通して、自分と相手の認識が必ずしも同じでないことや、これまで気付かなかった自分や相手の負担について知るきっかけを得られる動画である。

2. Women of change Italiaの、性別による賃金格差を描いた動画


すべての女性が力を発揮できるようにと作られたイタリアの団体「Women of change Italia」は、イタリアにおける性別間の賃金格差の実態を浮き彫りにするCMを公開した。

動画内には、強盗を彷彿とさせる目出し帽をかぶった人物が、ビデオ会議の中やビジネス雑誌など、日常の様々な場面に登場する。映像内では言葉が発せられることはないが、最後に現れる「女性に男性より少ない賃金を与えることは、盗みと同義である」というメッセージを通して、“強盗”と思われる人物が盗んでいたのが、女性の賃金だったことが明らかになる。

インパクトのある映像を通して、性別による賃金格差の課題を訴えている動画だ。

女性への暴力の危険性を訴える動画

3. イギリスのNGO・Refugeの、DVの危険性の啓発動画


「これは、新しい5Gのスマートフォン。リアルタイムの位置情報機能で、あなたの地域の交通情報をすぐに知ることができます」という言葉から始まるCM。一見スマートフォンのCMかと思っていると、次に聞こえてきたのは、「知ることができるのは、彼女の動きも」という言葉。

その後も、「従来のスマートフォンの10倍もの容量で、彼女の動画も撮り放題。これで自由自在に彼女のことを操ることができますね」「スマートホームにも対応しており、外出時であっても自宅の電気や冷暖房を簡単にコントロールできます。だから、どこにいても彼女を支配できる」といった言葉が続く。

テクノロジーの進化は便利をもたらしたが、同時に女性のコントロールも簡単にした。家庭内暴力の危険の高まりを示唆している動画である。

女性の美のあり方を問い直す広告

4. 貝印株式会社『剃るを自由に』

 

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総合刃物メーカーの貝印は、2020年8月に『剃るを自由に』という広告を公開。そのインパクトの大きさから話題になったこの広告では、これまで“当たり前”とされてきた「女性は毛を剃るべき」というステレオタイプに疑問を投げかけている。

同社が行った調査によると、「気分によって毛を剃っても剃らなくても良い」と思う人は80.5%。つまり、多くの女性が、必ずしも毛を剃る必要性を感じていないということが明らかになった。その事実をバーチャルヒューマンMEMEが代弁し、『ムダかどうかは、自分で決める。』というコピーと共に、グラフィックが町中に展開された。

5. Dove『リアルビューティ』


2013年に公開され、世界中で話題となったパーソナルケアブランド・Doveが制作した動画。一人の男性が、対象となる女性の顔を見ずに、本人や他の人の説明だけをもとにその表情を描いていく。描かれた人たちは、自分の説明によって描かれた絵と他の人の説明をもとに描かれた絵を見比べて、その違いに驚く。

最後には、「気づいてください。あなたは、自分が思うよりずっと美しい」というフレーズが映し出されて映像は終わる。一人一人が“ありのままの自分の美しさ”に気付くきっかけを与えるようなショートムービーとなっている。

まとめ

鮮やかな黄色いミモザの花が様々な場所で見られる国際女性デー。年々、この日を祝したイベントなどは増えているように見受けられる。ただ同時に、その主催者や関係者の多くは女性たちであり、「女性が何かをする日」であるようにも感じられる。

ただ、今回ご紹介した広告や動画のなかでも描かれていたように、女性が抱える課題や改善されるべき権利というのは、女性だけが考えれば良いものではない。社会に生きる私たち一人ひとりが生きやすい世の中へと変わっていくことが、大きな一歩になると感じる。

まずは家族や友人など、大切な誰かと一緒に映像を見ることから、どんな未来を描いていきたいか考えてみてほしい。

【参照サイト】国際連合広報センター
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