日常生活で、私たちが化石燃料に頼っていけるのはあとどれくらいだろう。気候変動や大気汚染の進行や、燃料の枯渇、国際関係の複雑化などから、今さまざまな場所で化石燃料に代わるエネルギー源の研究開発が、待ったなしで進行している。
そんなさなか、米国デラウェア大学のユーシャン・ヤン教授率いる研究チームは、劇的にCO2を除去できる方法を「偶然」見つけた。開発中の燃料電池により、毎分10リットルの空気をろ過し、周囲のCO2のうち約99パーセントを除去できることを発見したのだ。
もともと研究チームは、燃料の化学エネルギーを直接的に電気に変換する燃料電池に着目。ハイブリッド車やゼロエミッション車などへの実装を目指して、水素交換膜(HEM)による燃料電池の実験を行っていた。
しかし彼らの開発した燃料電池は、空気中のCO2に非常に敏感であり、CO2に触れると燃料の性能と効率を最大20%低下させてしまうという課題があった。このままでは従来のガソリンエンジンに性能で及ばないため、性能や効率が下がるメカニズムを掘り下げるうちに、彼らは気付いた。
この燃料電池がCO2のほぼすべてを捉えているから電池自体の性能が下がっているでは?課題だと思っていたことは、実際には(別の課題に対しての)解決策になり得るのでは?
研究チームは、デバイスの内部をつなぎあわせ、短く接続することで「CO2を分離するデバイス」への方向転換を決意した。
大学のリリースでは「危険な作業でしたが、燃料電池を短くすることで、バイポーラプレートや集電体、電線など普段は内部でかさばっているコンポーネントを取り除くことができました」
と書かれている。これにより、予定した燃料電池よりも短い2インチのデバイスを作った際には、周囲のCO2を取り除くことに見事成功。
価格も112米ドル(約1万3,000円)ほどで経済的なため、実用化しやすい。この仕組みを自動車や航空機、宇宙船、潜水艦などにを応用すれば、さまざまな排気ガスからCO2を取り除くことができるだろう。
この研究テーマに取り組んできた歳月は、実に15年。当初、想定していた燃料電池とは少し異なり、この作用は代替燃料の進歩にはならないとヤン教授自身もリリースで述べているが、努力の甲斐あり結果的には気候変動を抑止する研究成果が出たのである。
【参照サイト】UD researchers report hyper-efficient method for removing carbon dioxide from air
【参照サイト】A shorted membrane electrochemical cell powered by hydrogen to remove CO2 from the air feed of hydroxide exchange membrane fuel cells
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Edited by Kimika