Makuake×米澤文雄シェフによる、サステナブルな「未来のための一皿」対談レポ

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フランスのミシュラン社が毎年発表するミシュランガイド。2022年に星を多く獲得したのは、高級食材を扱うことにこだわったレストランよりも、サステナビリティに重きを置いている若手シェフのお店だった。この流れは年々加速しており、レストランの評価基準自体が時代と共に変化してきていることは明らかだ。

今後料理人には、単に料理の美味しさだけではなく、食のサステナビリティをどうクリエイティブに作っていくのかという観点が求められてくるだろう。

そんな時代にぴったりのプロジェクトが2022年4月に始まった。アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」と、次代を担う若手料理人が集う食のクリエイティブ・ラボ「CLUB RED」が協働でローンチした、食の未来に貢献する「未来のための一皿」プロジェクトだ。

未来のための一皿プロジェクト
本プロジェクトは「CLUB RED」に所属する若手シェフ8人が、食品ロス削減や地産地消、地方創生などをテーマとした「未来のための一皿」を考案し、それを「Makuake」のプラットフォーム内の特設ページで公開するというもの。生産者のストーリーや食材の魅力を料理人の手で最大限引き出した一皿や、食材を無駄にしないサステナブルな食文化を発信する一皿など、実力を持つシェフたちがそれぞれの想いと技術をかけあわせ考案したメニューは、どれもクリエイティビティとサステナビリティをあわせ持つ魅力的なものばかりだ。

今回は本プロジェクトのローンチに際し、「Makuake」の共同創業者である坊垣佳奈(ぼうがき・かな)さんと、自身も「CLUB RED」の一員である料理人の米澤文雄(よねざわ・ふみお)さんが「食のサステナビリティ」をテーマに対談を行った。

プライベートでも仲が良く、普段からさまざまなことについて議論し合っているという2人。サービス開発や組織運営の視点を持つ経営者坊垣さんと、食とサステナビリティを追求し続ける料理人米澤さんの対談の中では、飲食業界のサステナビリティの課題から始まり、「Makuake」というプラットフォームが持つサステナビリティの可能性、そして私たちに必要な消費に対する意識変革まで、幅広く語られた。

米澤シェフ、坊垣さん

米澤文雄さん(左)、坊垣佳奈さん(右)

食のサステナビリティは、一筋縄では語れない

坊垣さんは、新卒入社したサイバーエージェントを経て、2013年に商品の裏側のストーリーを伝えながら商品を販売するアタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」を同僚と共に創業。コロナ禍をきっかけに広く使われるようになった「応援購入」という言葉を生み出したのは、「Makuake」だ。そんな坊垣さんが「Makuake」のサービスを通じて目指す世界とは。

米澤さんは、22歳で渡米し、ニューヨークの三つ星レストラン「Jean-Georges」で修行を積んだのちに日本人で初めて同店の副料理長を任された実力派料理人。2019年にはヴィーガンレシピ本を発売し、国内でヴィーガンという言葉を浸透させた火付け役でもある。過去にはグリルをメインとしながら魅力的なヴィーガン料理も同時に提供する南青山のレストラン「The BURN」の総料理長を務め、現在は株式会社No Code代表兼シェフを務めている。

消費者の意識が、少しずつ環境問題やサステナビリティ、エシカルといった方向に移行しつつある中で、飲食店はこれまで通り「美味しい」もしくは「安い」というだけでは選ばれなくなってきている。そういった流れの中、飲食業界の内側に変化は起こっているのだろうか。

米澤さん「20年ほど前は、シンプルに美味しいものを作るという意識を持つ料理人が大多数だったように思います。それが、10年ほど前からは環境や社会問題などに目を向けながら仕事をする料理人が増えました。未来の食材が枯渇していくことは逃れられない事実であるからこそ、料理人は自分たちが使っている食材に責任を持つことが必要です」

料理人の意識が変化してきていることは、大きな希望だ。しかし、食にまつわるサステナビリティは、料理人一個人だけで解決することが難しい場合も多い。

例えば今、世界の海では魚の乱獲が大きな問題となっており、水産資源の枯渇が深刻だ。1950年に2,000万トンだった世界の漁獲量は、1980年までに3倍に増加。さらに1990年代以降は漁獲量が頭打ちになっており、枯渇の危機にある魚が増えてきている(※1)。一方で、生業として生きるために魚を獲ってきた漁業者は、海のサステナビリティと、人々の食卓や自分たちの仕事のサステナビリティを天秤にかけながら仕事をしなければならず、苦しい窮地に立たされている。

「食を取り巻くサステナビリティの課題は非常に大きく、また複雑です。ですから、サステナビリティどう捉えるべきかは勉強すればするほど難しく感じますし、『これだ』という解決策は何ひとつないと思っています」

そう語る米澤シェフの言葉には、長年の経験と知見に裏付けされた説得力があった。
米澤シェフ、坊垣さん

“作りすぎ”を防ぐ、「Makuake」の受注生産システム

食と同じく、私たちの生活に身近であり、廃棄など多くの問題を抱えているのがアパレル業界だ。坊垣さんはMakuakeを運営するなかで、そのアパレル業界には大きな変化が起こっており、Makuakeがその廃棄問題のソリューションのひとつとして機能していると話す。

坊垣さん「これまでのアパレル業界では、その年の流行を予測したうえで、予測が外れることも考慮して余分に製品を生産してきました。そして、こうした大量生産型の仕組みが、大量の廃棄物も生み出すようになったのです。これに対しアパレル業界は、大手ラグジュアリーブランドの廃棄物問題が過去に表沙汰になったこともあり、廃棄をなくす新たな生産工程にシフトしてきています。

そこに、Makuakeというプラットフォームが解決策としてうまくマッチしました。Makuakeでは基本的に『受注生産』という形を取っていて、製品が作られる前に買い手が確定します。そのため、市場の正確な需要を事前に予測でき、生産のタイミングで『余分に作らない』判断ができるので、無駄が出ないのです」

米澤シェフ、坊垣さん
『余分に作らない』判断をできる点は、今回の「未来のための一皿」プロジェクトや、そのほかの食に関するプロジェクトにもあてはまる。米澤さんも、そんなMakuakeの持つ価値を評価していた。

米澤さん「Makuakeの受注生産システムは、ものづくりの本来あるべき姿だと思いますね。購入する方も、生産者のストーリーも含め、本当に欲しい物を自分できちんと選択する──これが、健全な消費の在り方だと思います。

飲食業界でも、出てしまったごみをどう処理するかより、そもそもごみをなるべく出さない努力をするほうが重要で、むしろ簡単にできることなのです。レストランでは、仕込みすぎ、発注しすぎる料理人は一流とはみなされません。その日そのときに必要な、ちょうど良い分量の発注をできる人の方が、評価されます」

“消費する”から“支える”に、買い手の意識を持っていく

廃棄問題は、飲食店や料理人も避けられない大きな課題だ。今回の「未来のための一皿」プロジェクトでも、食品ロスの課題にアプローチする料理がいくつか紹介されている。

例えば、福岡県「三井港倶楽部」にて総料理長を務める波多江優貴シェフは、キャビアを採った後に通常は廃棄されてしまうチョウザメの身の廃棄を防ぎ、その素晴らしさを知って欲しいという想いから、チョウザメの身を主役にした一皿を開発した。

また、岩手県遠野市の菅田幹郎シェフは、通常は廃棄される野菜のゆで汁や戻し汁、端材をベースに、日本が誇る保存食・発酵食の技術、遠野市の伝統的な調理法を用いた一皿を考案。地元の食文化を守るとともに、飲食業界の根深い問題である食材のロスに対して、彼なりの答えを表現したという。

プロジェクトページ

「未来のための一皿」プロジェクト一覧。日本全国の若手シェフが、想いを込めた料理を提案している。

米澤さんも、食品ロスは飲食店の長年の課題だと話す。

米澤さん「レストランでは基本的に可食部分の廃棄は出ませんが、種や皮、骨、鱗といった部分はどうしても毎日廃棄せざるを得ません。そういった生ごみの処理はレストランが長く頭を悩ませている課題です。コンポスト(食品残渣の堆肥化)はよくそのソリューションとして挙げられますが、特に日本の都会のような敷地の狭いところにあるお店では、実行するのは難しいのです」

そして、「こうした課題の解決には、買い手の意識を”消費する”のではなく“支える”という方向に持っていくことが必要不可欠になってくる」と、米澤さんは強調する。

米澤さん「コンポストの設備を導入するにも、テイクアウト用のプラスチック容器に代替素材を使用するにしても、現在ではかなりの費用がかかります。そのため、『サステナブルって、やっぱりまだお金がかかるな』というのが飲食業界の共通認識でもあるのです。ですから、その設備代や環境負荷の少ない包装材の値段を乗せたとしても、サステナビリティに取り組んでいる飲食店をお客さんが選んで来てくれるようになると、うまく回っていくと考えています。

食をもっとサステナブルに豊かにするためには、買い手側が“買い支える”という意識をつけていく必要があると思います」

対談の様子

「何が作られて何が買われるべきなのか」を議論する

では、買い手の意識変革を起こすために作り手ができることは、何なのだろうか。

坊垣さん「本来その商品が持っている価値が買い手にきちんと伝われば、値段が上がることを受け入れられるようになるはずだと思うのです。例えば、Makuakeで通常よりも高価な日本酒が売れているのは、その日本酒が造られた背景も含めた価値が伝わっているから。応援コメントを見ても、ユーザーが機能性や価格だけで商品を選んでいないことがわかります。

ですから、生活者の方に作り手の顔やこだわりを知って物を買うということから始めてもらうためにも、作り手は商品の背景を理解をしてもらおうという意識を持ち、売り方を変えていかなければいけないですね。

Makuakeは、『生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現』というビジョンを掲げていますが、生まれ、広がり、残る商品を決めるのは、実は私たちではなく買い手なのです。そして我々の役割は、買い手がそれを判断できる状態を作ることです。

究極のサステナビリティは、なるべく新しいものを作らないようにすることなのかもしれません。でも、人類には新しいものを求める根本的欲求や、便利さを求める欲求が必ずあり、それはなくなることはないと思っています。ですから、これからも新たな商品は作られ続けるでしょう。だからこそ、『何が作られて何が買われるべきなのか』という議論が大事だと思っています」

米澤さん「自分たち料理人も、常に自分たちが作りたいものと、お客様に選ばれるもののバランスを考えながら料理を提供しています。持続可能な消費には両方の視点が必要だからこそ、お客さんと料理人はお互いをリスペクトし合い、相思相愛になることが必要なのではないでしょうか」

坊垣さん「インターネットやSNSの発達により個の発信ができるようになってきたことで、企業やその商品の裏側に負の側面があれば、すぐに消費者に気づかれるようになりました。これは「一億人総監視社会」と呼ばれており、透明性が高く裏側が全て見えるからこそ、本当に良いものが選ばれる流れはできてくるはずだと期待しています。Makuakeは、これからもそれを後押ししていきたいと思っています」

ものの売り方、買い方。2人の会話からは、サステナビリティを推進するために私たちができることは、身近な生活の中にこそあると気づかされる。

最後に米澤さんは、そんな私たちの意識についても、持続可能にするためのアドバイスをくださった。

米澤さん「サステナビリティにとらわれすぎず、生活の中で“なんとなく、少しずつ気にする”ことが大事かもしれません。

例えば食生活の中では、昨日は焼肉に行ったから今日はヘルシーにしようかなとか、お昼にデザート食べたから、おやつを食べるのは止めようとか、そうやってバランスを取って健康に気を使った選択をしますよね。サステナビリティも同じで、『これは良くてこれはダメ』と決め切ってしまうと、窮屈になってしまいます。

だから、最初はちょっと“気にする”ことから始める。すると、その次にはきっと、“知る”きっかけが訪れます。そうしたらその次は、もっと具体的に“学ぶ”プロセスに入っていく。これをみんながやることで、サステナブルな選択や行動が日常に落ち、ブランド化される。そうすることで『サステナブルってかっこいい、おしゃれ』という流れができ、良い選択が自然と選ばれるようになっていくのではないでしょうか」

編集後記

現代では、簡単に手に入るものや情報が多いからこそ、私たちの取捨選択がこれからのサステナビリティを作っていくためには重要だ。その商品はどのような背景で作られたのか。それは本当に今欲しい物なのか。便利すぎる社会で私たちに与えられた使命は、自分にとって、そして社会にとっての“本当の価値”を改めて考えるというアクションを、怠らないことなのかもしれない。

米澤シェフ、坊垣さん

その点、「未来のための一皿」のプロジェクトページでは、シェフのストーリーや料理に込められた想いが丁寧に説明されており、ただ飲食店に行って料理を注文するのとは違う、食の背景まで知ったうえでの「応援購入」を体験することができるかもしれない。

また、2022年5月13日に「食で未来と世界を変えたい」と本気で信じ、挑む料理人たちの大会「RED U-35 2022」が開幕した。こちらは、35歳以下の調理することを主たる業務とする人であれば、誰でも応募可能だ。

RED2022

※1 持続可能な漁業の推進(WWF)

【関連サイト】「未来の一皿」プロジェクト(公式)
【関連サイト】RED U-35
【関連サイト】Makuake(公式)

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