私たちの生活に潤いをくれる、音楽。世の中には、聴覚にハンディキャップのある人たちでも音楽を楽しむことのできる方法が存在することをご存じだろうか?
デンマーク工科大学のジェレミー・マロゾー准教授は、スイスの音楽家2名と共同で、聴覚障害を持つ人々に豊かな音楽体験を提供するためのアート・インスタレーションを制作した。それが、音楽の振動を体に伝える「触覚椅子」だ。
ジュネーブの芸術歴史博物館で触覚椅子の最初の展覧会が催されたのは2020年の10月。展覧会では、観客は20分間の間、強力な振動を伝えるタクターの備え付けられた台に座ったり寝そべったりすることで様々なアーティストのライブコンサートを感じることができた。この試みに反響が集まり、2022年の間毎月、新たなインスタレーションを用いたライブショーが行われることが決定したのだ。
ジュネーブの美術歴史博物館で展示されている触覚椅子には2つのプロトタイプがある。一つのプロトタイプは低周波と中周波を身体の様々な部位に伝達するように設計、もう一つのプロトタイプは、座る人の周りに配置されたロッドを介して振動が伝わるように設計されている。
開発チームはジュネーブでのライブコンサートを通し、ユーザーからのフィードバックを獲得、それらを活用し2022年中に3つの新しいプロトタイプを開発する予定とのことだ。
音楽は、耳で楽しむもの──そんな思い込みを壊す「触覚椅子」。この発明のように、ハンディキャップによる制限を解き放つアイデアがこの世の中に溢れることを願う。
【参照サイト】Music can be experienced – despite poor hearing(DTU)
【参照サイト】DTU installation will help hearing impaired people enjoy music(DTU)
Edited by Yuka Kihara