臭覚を使って街を歩く「匂いマップ」五感を研ぎ澄ますきっかけに

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嗅覚は、私たちが世界を認識するうえで大切な五感のひとつだ。目に見えない匂いをより強く意識し、自分が暮らす街や、旅先の街を深く理解する方法はないだろうか。

イギリス・ケント大学でグラフィックデザインを教えるケイト・マクレーン氏は、さまざまな街の嗅覚的景観を地図にした「匂いマップ」を作っている。

草や花の匂いがする場所、香水の匂いがする場所、煙の臭いがする場所などが、地図上に示されている。この地図を持って街を歩いてみたら、新たな発見がありそうだ。

"Two Centuries of Stink". Digital media. ©2021 Kate McLean. With permission from the artist.

“Two Centuries of Stink”. Digital media. ©2021 Kate McLean. With permission from the artist.

匂いマップは、街歩きを通じて得られた匂いの情報を、デジタルデザイン、水彩絵の具、アニメーション、彫刻など、さまざまな方法で視覚化して作られる。

たとえば、ニューヨーク・スタテン島の匂いマップは、道路にチョークで絵を描いて表現。プロジェクトの参加者たちに、街歩きで発見したお気に入りの匂いを絵にするよう呼びかけた。

また、シンガポールの街の匂いマップは、アクリルやナイロンなどを使った立体作品だ。プロジェクトの参加者たちに、匂いがどれくらい持続したか7段階の選択肢から選んでもらい、その回答を色分けされた小さい球体で表現した。

匂いは移ろうため、マクレーン氏の地図を持って同じ場所に行っても、同じ匂いは体験できないかもしれない。それでも匂いマップが、その場所で過去に何があったか想像するきっかけになれば、地域への愛着が増すのではないだろうか。

こういった活動を通して、かすかな匂いに気づくようになると、自分がいる場所でこれから何が起きるか、未来を思い描くこともできるかもしれない。地図を持って、匂いを巡るさまざまな時間軸へ思いを馳せてみたい。

街を歩くときに嗅覚などの五感を働かせると、メンタルヘルスにポジティブな効果をもたらすこともある。

2021年に「回復する都市:メンタルヘルスとウェルビーイングのための都市設計」という本を発表したレイラ・マッケイ氏は、アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校のGreater Good Science Centerの取材に対し、人々のメンタルヘルスを向上させるために、「五感を刺激する都市」を設計することを提案している。

街中で、騒音や好ましくない臭いなどに遭遇することがあるかもしれないが、そんなときも「自分の五感が研ぎ澄まされている」とポジティブに捉えてみてはいかがだろうか。

【参照サイト】Home – Sensory Maps
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