「地球環境のために、肉を食べることを控えよう」と考える人がいることを、ご存じだろうか。
畜産業は、世界の温室効果ガス排出量の14.5%を占める(※1)。牛のげっぷに含まれるメタンが、CO2の25倍もの温室効果があることも、懸念されている(※2)。
また、畜産業のために世界の土地の3分の1が使われており(※3)、森林伐採を引き起こしてきた。
このように、肉食が環境に及ぼす影響に世界各国で注目が集まるなか、これまでにないアプローチで肉を減らすことに取り組む街が現れた。
人口約16万人の街であるオランダのハーレム市は、2024年から、市内での肉を使った製品の広告を禁止すると発表。バスなどの公共交通機関や、街中の広告スクリーンなどでの宣伝が禁止される。
従来よりも持続可能な方法で生産された肉も禁止の対象となるかどうかは、まだ未定だ。このような取り組みを市として行うのは、世界で初めてだという。
この決定は、オランダの緑の左派党(GroenLinks)の議員であるジギー・クラーゼス氏の提案によるものだ。同氏はラジオ番組「Haarlem105」で、次のように語っている。
肉を食べ続けたい人がいるのは、構いません。私たちは、皆さんに『気候危機が迫っています』と言いながら、その原因のひとつになっている商品を買うよう勧めたくないのです。ハーレム市の取り組みがきっかけとなり、オランダ全土に広まると良いと思います。
(中略)このルールは、ファストフードチェーン店の広告にも適用されるべきだと考えています。
ハーレム市で禁止されるのは、肉の広告だけではない。航空機や化石燃料、化石燃料で走る自動車の広告も、2024年から禁止されるという。
航空機や化石燃料などの広告は、すでにオランダのアムステルダム市やハーグ市でも禁止されているが、禁止リストに肉の広告も加わる点が目新しい。
だが、ハーレム市の発表に対して、食肉業界や一部の議員などからは「価値観の押し付けだ」「養豚業者などにとって、ダメージが大きすぎる」「政治的な理由により広告を禁止するのは、独裁的だ」「表現の自由の侵害であり、卸売業者から訴訟を起こされる可能性がある」といった反対意見も出ているという。
こうした批判があるなかで進められる「肉の広告禁止」。オランダ統計局によると、同国民の95%は肉を食べる習慣がある(※4)が、街から肉の広告が消えたら、人々の食生活は変化するだろうか。
※1 FAO – News Article: Key facts and findings
※2 農研機構【ガイドコミック】/第4話・牛のげっぷと地球温暖化
※3 Environmental Effects of the Livestock Industry: The Relationship between Knowledge, Attitudes, and Behavior among Students in Israel – PMC
※4 6. Vleesconsumptie
【参照サイト】Dutch city of Haarlem may be world’s first to ban most meat ads – BBC News
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