アメリカの「中絶」をめぐる論争、若き建築家たちは何を想う

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2022年6月、最高裁判所の判断に基づき、人工妊娠中絶を認めるか否かが各州の権限に委ねられるようになったアメリカ。これに伴い、他の州に行かないと中絶できない人が現れるなど、中絶へのアクセスをめぐる課題が生まれている。

そんななか、アメリカ・プリンストン大学で建築を学ぶ学生が、建築家も最高裁判所の判断に関心を向けるべきであることを伝える、インスタレーションを実施した。

2022年7月から9月にかけて展示されたインスタレーションには、「私たちは抗議します。中絶へのアクセスを守る建築家を望みます」と書かれている。

一見しただけでは、「建築家と中絶の関連性が分からない」と感じる人がいるかもしれない。彼らは次のような想いを持って、社会の課題を自分事化させたのだ。

建築家には、医療設備を含め、安全で健康的でアクセスしやすい建物環境を提供する責任がある。中絶は医療に含まれるため、中絶と建築は切り離すことができない。中絶手術を行うクリニックや保健センターに対する、人々のスティグマをなくし、理解と支援につなげていく必要がある。

学生らはインスタレーションの他に、「中絶へのアクセスを守るために、建築家ができる10の行動」と題した一覧を発表。「公平性と正義のためのデザイン運動を促進する」「建築環境における自由と解放を求める」「アメリカに、より良い保健センターをつくる」といった項目を挙げ、自分たちができそうなことを模索している。

最高裁判所の判断を受けて、一部の州では、中絶手術を行うクリニックなどが閉鎖された。こういった状況を見て、建築を学ぶ者としての使命感に駆られたのかもしれない。

中絶手術を受ける当事者、医療関係者、法律関係者に限らず、さまざまな立場の人が、ショックを受けている人々に寄り添い、自らの意思を表明できることに気づかされる。

あなたも、自分にとって馴染みのあるテーマを切り口に、社会の出来事について考えてみてはどうだろうか。

【参照サイト】We Dissent. Architects for Abortion Access! – Womxn in Design and Architecture
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