2022年11月6日〜20日、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されたCOP27では、気候変動の影響に対して脆弱な途上国を支援するための「損失と損害への基金」を創設することが合意された。
過去20年間に気候変動によると見られる自然災害を受けた主な国は、1位がプエルトリコ、2位がミャンマー、3位がハイチ、4位がフィリピン、5位がモザンビークと、発展途上国──いわゆるグローバル・サウスが上位を占める(※1)。そして、累積CO2排出量の上位を占めるのは、米国、中国、ロシア、ドイツ、英国、そして日本といった先進国だ(※2)。こうしたデータもあり、気候変動においてはグローバル・サウスが保障を受けるべき被害者で、先進国が責任を取るべき加害者だという認識が、多くの人に広まりつつある。
一方で、グローバル・サウスは気候変動対策において世界をリードする可能性を持っているとも言える。
アフリカにおける草の根の気候変動対策を推進するプロジェクト「350 Africa」のディレクターであるランドリー・ニンテレツェ氏は「アフリカは、気候変動の犠牲者では終わらない。私たちは、気候変動対策のリーダーになり得る存在だ」と力強く語っている。
人口が2050年までに約25億人に達すると予想されるアフリカ大陸では、農業、エネルギー、雇用の3つのセクターにおいて、人口増に対応するための大きな革新が求められている。そうした状況に対して同氏は、アフリカは風力、太陽光、水力、さらには地熱資源も豊富に有し、再生可能エネルギーの導入に大きな可能性を秘めていると語る。さらに同氏によれば、再生可能エネルギーのプロジェクトは、1ドルの投資に対して、化石燃料よりも多くの人を雇用することができるという。
国連が発行するデジタルマガジン「Africa Renewal」でも、近年アフリカでは太陽光エネルギー市場が非常に拡大していることや、エジプト、南アフリカ、ケニア、ナミビア、ガーナの5か国が牽引し、1.8Wを超える新たな太陽光発電設備が誕生したことが報じられている。また、モロッコには世界最大の集光型太陽光発電所であるNoor Ouarzazate太陽光発電所が存在し、国内の電力の3分の1以上がすでに再生可能エネルギーで賄われているそうだ。
加えて、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調査によると、エジプト、エチオピア、ケニア、モロッコ、南アフリカなどの国々は、最新の再生可能エネルギー利用を加速すると表明し、エネルギー移行の取り組みを進めている他、ルワンダとスワジランドも野心的な再生可能エネルギー目標を設定しているという。
先進国と比べると発電施設などのインフラ整備がまだまだ遅れているグローバル・サウスでは、環境に配慮したインフラをゼロから整備しやすいという強みがある。だからこそグローバル・サウスは、先進国の失敗から学び、積極的に新たな取り組みに舵を切ることができる可能性を秘めた存在だと言えそうだ。
冒頭で述べた通り、先進国は当然、これまでのCO2排出量の大部分を占めてきた責任を取り、グローバル・サウスへの保障と対策を進めていく必要がある。しかしこれからは同時に、グローバル・サウスが気候危機に対処するためのリーダーシップを発揮する時代が来るのかもしれない。
【参照サイト】COP27: Africans are not victims, we are leading climate action | Opinion | Eco-Business | Asia Pacific
【参照サイト】 350 Africa
【参照サイト】 Push for renewables: How Africa is building a different energy pathway.
※1 「世界気候リスク指標2021」シャーマンウォッチ
※2 憂慮する科学者同盟資料
Edited by Motomi Souma