「白人以外は入り口が別」南アフリカのアパルトヘイトを追体験する博物館

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2020年、アメリカで始まった人種差別抗議運動「Black Lives Matter」が日本でも大きなニュースとなった。一方で、かつてのアメリカ南部での差別である、「人種によって使えるトイレやバスが違う」といったようなあからさまな差別にはなかなか遭遇しない現代で、「差別」というものを自分ごととして捉えるのが難しいという人もいるかもしれない。

南アフリカ・ヨハネスブルグのアパルトヘイトミュージアムは、アパルトヘイト(人種隔離政策)の被害者ではない人が当時を追体験できるように、生々しさを感じる入場システムを導入している。

来館者は、本人の人種にかかわらず「白人」もしくは「非白人」と書かれたチケットを受け取る。割り当てられた人種に応じて、白人用の入口から入るか、非白人用の入口から入るかが決まる仕組みだ。人種によって使える入口までもが違った、アパルトヘイト時代を再現している。

 

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館内に入っても、しばらくは白人用の通路と非白人用の通路が分かれている。両通路の間には鉄格子があり、天井からは「女性用トイレ、ヨーロッパ人専用」「白人用のタクシー乗り場」などと書かれた看板が吊るされている。人種差別を受けるとはどういうことか、心にずしっと来るものがありそうだ。

アパルトヘイトミュージアムには、人間の暗部を浮き彫りにする展示が多くある一方で、明るい希望を感じさせる展示もある。

たとえば、「旅」という展示スペースでは、1880年代にヨハネスブルグで金が発見された後、さまざまな国から出稼ぎ労働者の人がやって来た様子が表現されている。この時期には、多様な人種が混在するコミュニティが存在していたという。

「新憲法」という展示スペースには、片手で握れるくらいの大きさの石が、たくさん用意されている。差別と闘うことを約束する来館者は、石を手に取り、専用のスペースに積んでいく。約束する来館者が増えれば増えるほど、石の山が大きくなるのだ。

アパルトヘイトと闘い、ノーベル平和賞を受賞したネルソン・マンデラのことも、大きく取り上げている。公平な世界をつくるために尽力した同氏の呼びかけに、私たちは応えることができているか、考えさせられる。

アパルトヘイトミュージアムの見学を終えたら、外の空気を吸って深呼吸をし、自分の足元を見つめてみたい。

【参照サイト】Apartheid Museum
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