ベルギーの路面電車が、「動く庭園」になった理由

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あなたは想像できるだろうか。いつも利用している電車の車内が緑で埋め尽くされている光景を。

2023年6月、ベルギーのアントワープを走る路面電車の車内で、そんな前代未聞の光景が実際にみられたという。路面電車の中に一歩足を踏み入れると、まるで庭園にいるような錯覚に陥るだろう。

Antwerpen

Image via District Antwerpen

座席の間や窓を仕切るパネル、さらには天井にいたるまで、車内の空いたスペースが植物でぎっしりと装飾されているのだから。

この一風変わった路面電車緑化の取り組みは、アントワープの住民がガーデニングに参加することを奨励し、街をより緑豊かで健康的な場所に変えることを目的とした「Neighbourhood in Bloom(Buurt in Bloei)」と呼ばれるアントワープ地方議会の計画の一環として行われた。

もともとアントワープ市は都市緑化に力を入れており、住民の意識も変えようとさまざまな施策を行なっている。アントワープの住民は家の庭に植物を植えたり、通りと家の間の空間に吊るす花や緑の装飾を市に無料で依頼することができる。同市は、庭に水を撒くための雨水の汲み取り桶を購入したい人には、財政支援も行っているという。

2022年、この計画によりアーバンガーデニングを実践する市民が増え、200以上の庭、170カ所の植樹のほか、100カ所の花や緑の飾りが新たに街に生まれるという大成功を収めたことから、今年も実施されることになった。

車内には議会の取り組みについて案内するスタッフが常駐し、窓に貼られたQRコードを読み取ると、計画内容のより詳しい情報を知ることができるという。

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Image via District Antwerpen

何か新しいことを始めようか迷っているとき、「自分にもできる」という自信を持てることが、一歩踏み出す勇気となる。

「長さ35メートルの路面電車を庭に生まれ変わらせることができるなら、どんな場所でも緑溢れる空間に変えられるはず」乗客はきっとそんなことを思っただろう。

都市に緑を増やすことは、単に街を美しく見せるだけでなく、気温を下げる効果もあり、ヒートアイランド減少を緩和することにも役立つと言われている。また、公害を減らし、空気をきれいにするため、都市では見られなくなった沢山の動物や昆虫たちが再び街に戻ってくるかもしれない。

なにより、忙しなく時間に追われている都市部の生活者にとって、街中が緑に溢れることは、日常の中でリフレッシュする時間を持つきっかけを生み、ウェルビーイングにつながるに違いない。

人にとっても環境にとっても魅力的な都市に変えてゆく……一人では達成できないことも、誰かのリーダーシップや少しの後押しがあれば、人々の心は動き、より良い未来へと一気に舵を切っていけるのかもしれない。

【参照サイト】District Antwerpen | Overzicht

Edited by Erika Tomiyama

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