ホームレス状態から抜けたい。社会との接点がない人を支援する就職サイト「LinkedOut」

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「働く意欲がない」「怠けているだけだ」──ホームレス状態に関連する問題を取り上げる際、このような自己責任論がしばしば語られる。しかし、本当にそうなのだろうか?

「ホームレス状態の人々は怠惰で、働く意欲が無い」という誤解が間違っていることを証明したいと立ち上がったのがフランスの非営利団体ENTOURAGE(アントラージュ)だ。同団体は国際的な広告代理店であるTBWAのパリクリエイティブ エージェンシーと協業で、フランス国内のホームレスの人々の就職を支援するデジタルプラットフォーム「LinkedOut(リンクトアウト)」をスタートさせた。

ホームレス状態の人々がいざ就職しようと思った時に直面するのが、キャリアが途絶えていることから仕事を得るための「つながりも、道筋もない」という課題だ。意欲やスキルがあったとしても、仕事を得るための入口にたどり着けないため、就職できないという状況が生まれるのだ。同様に、企業としても意欲やスキルのある人材を見つけにくい。この課題に注目し、LinkedOutでは、色々なビジネスパーソンとつながり、転職などにも使われるサービス「LinkedIn(リンクトイン)」に代わって、つながりがなくても就職できる仕組みを提供している。

ホームレスの男性とビジネスマン

Image via Shutterstock

LinkedOutは、デジタルプラットフォームを活用し、企業とのつながりを補完している。具体的には、仕事を探すホームレスの人々が履歴書を同プラットフォームにアップすると、ソーシャルネットワーク上で拡散され、採用ニーズを満たす企業からオファーが届く仕組みになっている。

就職活動中は、ボランティアのコーチが6ヶ月間伴走し、週に1回のミーティングを通して、実際に就職するまでの各段階でサポートを行う。必要に応じて、利用者は不足しているスキルを獲得するためのトレーニングコースを受講することも可能だ。

また、企業側としても本サービスを利用することでメリットを得られる。自社の採用ニーズを特定し、ニーズに合った人材を確保できる点に加え、自社の採用活動を通じて、インクルージョン推進に向けた具体的なアクションを取ることもできるのだ。

実際に、本サービスを活用し採用活動を行う企業は130に及ぶ。例えば、フランスのスポーツ・アウトドアメーカー「Decathlon(デカトロン)」や、スーパーマーケットチェーン「Carrefour(カルフール)」など、名だたる企業も活用している。

LinkedOutによると、同サービスを活用した求職者はサービス開始から現在までに400人に達し、93%が「仕事探しへのモチベーションが上がった」と回答している。さらに、求職者の72%が最終的に新たな仕事に就くことに成功しており、うち6ヶ月以内に仕事に就いた人は全体の61%に上るという。

人が貧困の状態に陥る理由はさまざまだ。LinkedOutのシステムがユニークなのは、「お金がない」「仕事がない」など目に見える状況だけではなく、ホームレス状態の人々が転職する際の「つながりの薄さ」に目を付けたところだろう。同サービスは、企業が今まで発掘できなかった才能やスキルを見つけ出す助けにもなる。今日もフランスでは「才能やスキルを持ったものの、社会から遮断された人々」と「仲間を欲する企業」が出会っているのかもしれない。

【参照サイト】LinkedOut
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