デンマーク、すべてのフライトの乗客から「グリーン税」徴収となるか

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Flight Shame(飛び恥)”という言葉が話題になり、飛行機の環境負荷が高いことは多くの人に知られている。国際エネルギー機関(IEA)によると、2022年の世界全体のエネルギー関連CO2排出量のうち、航空業界が占める割合は2%であり、今後も増加すると見込まれている。2050年までのネットゼロを達成するためには、サステナブルな燃料の使用、機体やエンジンの改良、運航の最適化、需要抑制など、多方面からの対策が必要である。

そんな中、デンマーク政府はすべてのフライトに「グリーン税」を導入する新たな案を発表した。この計画は、2025年から段階的に実施され、2030年までにヨーロッパ内のフライトで約9ドル(約1,327円)、中距離フライトで約35ドル(約5,164円)、長距離フライトで約56ドル(約8,263円)に相当する金額をデンマーク・クローネで乗客に課す予定だ。

この案が採択されれば、年間約12億クローネ(約260億円)の税収が見込まれる。そのうちの半分を活用し、水素やバイオ燃料などの持続可能な燃料のみですべての国内便を運航できるよう航空業界のグリーン転換を目指す予定だ。歳入のもう半分は高齢者の年金増額に充てられることも明らかになった。

デンマークの気候・エネルギー・公共事業担当大臣であるLars Aagaard氏は声明の中で、「飛行機は環境負荷が大きい。デンマークの航空業界は、他のすべての業界と同様に、CO2排出量を削減し、環境に優しい未来を目指さなければなりません。私たちはその変化を作り出し、“グリーンフライト”を現実のものにします」とコメントしている。

一方、グリーン税の導入だけでは不十分で、国内線すべてを廃止すべきだという批判もある。「この提案は、結局は業界の成長を煽るグリーンウォッシュに過ぎない。需要削減のための税金はあまりにも少なく、そのほとんどは業界に飲み込まれるだろう」と航空業界の縮小を求めて活動している団体Stay Grounded Networkの共同創設者Magdalena Heuwieser氏はThe Washington Postに対してコメントしている。

賛否両論があるが、デンマーク政府だけではなく、ヨーロッパの多くの国が飛行機による環境負荷を抑えることを目的とした政策を発表している。今年の初め、オランダ政府は需要削減によって炭素排出を抑制するため、航空旅客税を約3倍に引き上げた。

また今夏、フランスは列車での所要時間が2時間半以内の場所間における国内線空路を法的に禁止した。画期的な法案としてポジティブな意見もある一方、環境団体からは不十分との批判もある。フランスの非営利組織、気候変動市民会議(La Convention citoyenne pour le climat)は当初、列車での所要時間が4時間以内のフライト禁止を提案していた。所要時間が2時間半以内の路線の場合、国内便の炭素排出量に占める割合は3%未満であり、インパクトが少ないためだ。

ネットゼロ実現に向け対策が十分とは言えないが、「グリーンウォッシング」をしている航空会社の取り締まりや、税金の導入・引き上げなど、航空業界の規制は広がってきている。気候変動という大きな社会課題に対してアプローチするには、政府主体の規制などの大きな動きもカギになる。安くて早い飛行機の移動が制限されることで、不便さを感じたり、不満が増えたり市民からの反発も多い中、政府がどのように市民を納得させていくかにも注目したい。

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【参照サイト】Denmark is proposing a ‘green tax’ on all flights

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