「進む」「止まる」だけじゃない。「今何の前にいる?」を教える点字ブロック

Browse By

視覚障害者の安全かつ快適な歩行を支援する設備として、街中で見かけることが多い点字ブロック。正式名称は「視覚障害者誘導用ブロック」で、1967年に岡山県で導入されて以来、日本のみならず世界各国で使われている。

現在日本で導入されているのは、進行方向を示す線状の「誘導ブロック」と、危険箇所や誘導対象施設等の位置を示す点状の「警告ブロック」の2種類だ。視覚障害のある人が足裏や白杖で確認している様子を見かけたことがあるだろう。

しかし、実はこの2種類の点字ブロックでは十分ではないといわれている。警告ブロックによって、その場所に何かしらの建物があることはわかっていても、それがレストランなのか、銀行なのか、それとも病院なのかを判断することは難しいのだ。そのため、都度周りの人に確認したり、だれかの同伴が必要となったりと、視覚障害者の精神的負担につながっている。

そんな中、視覚障害者が施設の種類を識別するのに役立つ新しいデザインの点字ブロック「SightWalks(Veredas que Guían)」が南米ペルーの首都リマで導入された。同国のセメントメーカーのセメント・ソル(Cemento Sol)社が開発したこのブロックには、1~10本の縦棒が並んでいる。上下の横棒に挟まれた縦棒が1本ならレストラン、2本なら銀行、3本なら食料品店、と白杖を使って棒の数を数えていくうちに、その施設が何かわかるようになっている。

セメント・ソルは、ペルー各地の視覚障害者協会と協力し、Sightwalksの効果を検証したところ、この点字ブロックがあれば視覚障害者が他人を頼らずに移動できることを確認したという。

また、セメント・ソルがこのデザインの著作権をもっていない点にも注目したい。視覚障害者が行き先をより簡単に知ることができるようこの点字ブロックが世界中で導入されることを願って、あえてオープンソースとしているのだ。つまりどの都市、組織、個人でもSightwalksのデザインを複製して導入することができる。デザインおよび実施に関する特許は、セメント・ソルのウェブサイトで公開されており、無料で利用できる。

「アクセシブルな道路が増えたことを誇りに思うと同時に、このプロジェクトが他の場所でも実施され、インクルージョンが強化されることを願っています。これにより、点字ブロックの重要性と価値を強調することができる。私たちにとって、これらの線はただの線ではなく、視覚を触覚に置き換えることができる意義があるのです」とペルー全国盲人連合会長のルベン・ゴイコチャ氏はLBBOnlineに対してコメントしている。

Sightwalksは、セメント・ソルが社会課題解決に向けて本気で取り組んでいることがわかる事例だろう。とてもシンプルなデザインだが、視覚障害者の日常にある課題の解決につながるアイデアだ。インクルーシブなデザインが、より多くの街の道路で導入されることに期待したい。

【参照サイト】Cemento Sol
【参照サイト】社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合「点字ブロックについて」
【参照サイト】This Peruvian Cement Brand Turns Sidewalks into Guides for People with Disabilities
【関連記事】バスから劇場までバリアフリー。ドイツにある、視覚障害者にやさしい都市
【関連記事】空いた時間で、誰かを助ける「目」になれる。視覚障害者とボランティアをつなぐアプリ

FacebookTwitter