「5人に2人の女性は、理想的な外見や体型になれるなら 、人生の1年以上を棒に振る」──これは、ボディ・ヘアケア製品等を扱うブランド「Dove」によるレポート内にあったデータだ。世界20カ国から集まった3万3千人以上の回答者の声を集約したこのレポートのなかには他にも、下記のような記述があった。
- 20%の大人の女性は、理想の外見を手に入れるためなら、夢の仕事をあきらめることもいとわない
- 10人に3人の女の子は、美しくなるためなら良い成績をあきらめることもいとわない
- 19%の大人の女性は、より良い見た目や身体を手に入れるために、毎月食料品よりも外見にお金をかけている
- 32%の女の子は、外出して楽しむことよりも外見にお金を使いたい
いわゆる「一般的な美」の基準は、時に私たちを制限する。それに拍車をかけている要因の一つに生成AIの存在が挙げられるだろう。生成AIが生み出す「美しい」女性たちは、ニキビもシミもシワも毛穴もない真っ新な肌を持ち、スリムで、性的な魅力を放っている。次々に現れるそうした画像は、女性の美における「完璧な正解」のように思えてしまうのだ。
先のレポートによると、女性の3人に1人は、それが偽物またはAIによって生成されたものだとわかっていても、オンラインで見た画像を理由に自分の外見を変えなければならないというプレッシャーを感じているという。
2025年までにコンテンツの90%がAIによって生成されるようになると予測されている今(※)、Doveは改めてAIによる美しさの定義を問うキャンペーン動画を作成した。
動画内では、PCを開いた女性がAIに「魅力的な女性」や「世界で最も美しい女性」などの画像を生成するようにプロンプトを打ち込む。そうすると、オリーブ色の肌、金髪、褐色の瞳といった同じ特徴を持つスリム体型の女性の画像ばかりが表示された。
次に彼女はプロンプトの最後に「according to Dove Real Beauty Ad(Doveのリアル・ビューティー広告によると)」を付け加える。そうすると、肌の色や状態、髪の色やスタイル、瞳の色、体型、年齢、障害の有無……何に制限されることもない、多様な美しさを持つ女性の画像が出力されていくのだった。
Doveは動画に加えて、「リアル・ビューティー・プロンプト・プレイブック」と呼ばれるガイドブックを公開。これは、ステレオタイプに頼らず美の多様性を反映した画像を生成するためにできることを詳細に紹介するガイドだ。このなかには、生成AIと美しさの関係やプロンプトの重要性などの基礎情報や、プロンプトを作成するうえで気を付けるべき点を記した実践的なアドバイスが掲載され、巻末には「インクルーシブなプロンプト」を書くための用語集も含まれている。
例えば、「『美しい髪、良い身体、可愛らしい顔』といった曖昧な言葉は、AIに解釈を委ねることになりステレオタイプ的な画像が生成されてしまうため避けたほうが良い」といったアドバイスが掲載されていた。
ガイドラインの中には、こんな言葉がある。
プロンプトを、AIのクリエイティブ・プロセスのスタートラインとして考えてみましょう。あなたがAIに描いてほしいと思うものをディレクションするのです。
AIに学習させるのも、指示をするのも人間だ。だからこそ、多様な美を描いてほしいなら、まず自分が多様な美をきちんと思い浮かべられなければならないだろう。プロンプトを書く時間はきっと、私たちにとって「美しさ」という概念をかみ砕く大切なものになるはずだ。
※ 90% of online content could be ‘generated by AI by 2025,’ expert says(Yahoo!Finance)
【参照サイト】 Global Report The Real State of Beauty(Dove)
【参照サイト】Beauty in the AI age(Dove)