「草花」が、歩きたくなるまちのリズムをつくる。都市デザインにおける植物の重要性

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全国チェーンのショップやコンビニが立ち並ぶ街角。黒いアスファルトと灰色のコンクリート。便利ではあるが、どこも同じような光景で個性に欠けると感じることも多い。一方で、個性豊かな店舗や特色ある風景が残る街は、歩いていて楽しい。あなたの住む街は、そんな「歩きたくなる」魅力的な街だろうか。

歩くことは健康にも環境にもよい。自動車と異なり、歩くことでスピードが遅くなり、寄り道をしながら目的地に向かうことも多くなることで、街に活気も生まれる。そんな街を作るには、広々とした歩きやすい歩道や、車線が制限された車道、ビルの地上階に並ぶ路面店……こうしたハードインフラが必要だろう。

しかし、それだけで良いのだろうか。もっと自然的で、五感を働くような場所を歩きたい。そんな気持ちを持つ人もいるのではないだろうか。

ではここで、意外な立役者に登場してもらおう。従来型のハード重視のまちづくりに対して、思わぬ力を発揮するのが小さな植物たちだ。

花壇

Image via shutterstock

色とりどりの草花は、自然の賑わいを感じさせ、私たちの感覚を刺激する。バラから紫陽花へと色合いが移るように、季節の変化を知らせる草花は、自然の循環を感じさせるのだ。

芝生や低木だけの都市設計は単調で退屈になりがちだ。しかし、花や形が変わる植物、風に揺れる草を取り入れると、視覚的な刺激と新しさが加わり、飽きのこない環境が生まれる。草花は毎年同じように咲くが、その時々で異なる美しさや香りを楽しむことができる。新しい建物を建てることなく、都市デザインに寄与するのが、植物や花なのである。

街に草花を増やすことは、他にも利点がある。街に草花を増やすと、視界が飽きずに歩けることで歩行者が目的地まで快適に歩ける。また、草花が歩行者の近くに咲いている状態をつくることで、歩行者はテンポよく歩く感覚が得られる。これにより、歩行者の体験と街の活気が向上するというわけだ。

ロンドンのウォーカブルシティ

ロンドンでもハンギングバスケットはまちづくりの欠かせないアイテムとなっている。これにより、都市の風景が明るく柔らかい雰囲気に変わる。 Image via Sun_Shine / Shutterstock

近代都市の設計で重視されていたのは、ハード面・経済活動などのアプローチであった。しかし、住宅、交通、食事、子育てなど私たちが人間として生きていくために行う「ケア」の仕事に重点を置くフェミニスト・シティという考え方も生まれているように、近年あらゆるジェンダーや、自然を含むすべての生き物の心地よさを考慮したまちづくりへとシフトしている。

私たちもまた、消費し続けるだけの便利な街を求めるマインドセットから脱することが必要である。そしてそうした中で活躍するのは、ほんの小さな草花たちだといっても過言ではないだろう。

【参照サイト】国土交通省 まちなかウォーカブル推進事業
【参照サイト】The Missing Flower Power in Walkability and Neighborhood Vitality
【参照文献】まちなかウォーカブル推進事業の概要
【参考文献】藤本千尋/田畑智弘(2023)「高齢者のフレイル予防を考慮したウォーカブルなまちづくりの考査」『日本都市計画学会 都市計画報告集』第22号、8-11頁。
【関連記事】もし、街が「女性目線」で作られたら?ジェンダー平等都市・ウィーンを歩く
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Edited by Erika Tomiyama

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