暑い季節がやってきた。
今年も40度近い酷暑や、豪雨などの災害が懸念されている。災害級の、気候変動時代の夏がくるのだ。正直、気候変動はもう、どうしようもない。エアコンのスイッチを入れるだけだ──そんな諦めモードの人はいないだろうか。
複雑な問題が絡み合っている気候変動。しかし、そんな困難な課題を解決するカギは女性であり、女性の声を取り入れることが不可欠だといわれているのはご存じだろうか。
2019年にEuropean Journal of Political Economyに掲載された研究では、国会議員に女性が増えると気候変動に対して厳しい政策を取る傾向が強まり、CO2排出削減が促進されることが明らかになった(※1)。
慣習的に、女性は炊事や家事、育児を担うことが多く、これにより気候変動の影響を直接受けやすい立場にある。災害によって生計を失う割合も、女性の方が男性より高いという。気候変動の影響によって死亡したり、ケガをしたりする女性の人数は、なんと男性の人数の14倍にのぼるという。また、世界銀行によれば、2050年までに気候変動で住居を失う人は1.43億人になると見込まれているが、そのうちのほとんどは、女性や子どもだと言われている(※2)。
こうした気候変動の影響を大きく受けている女性であるからこそ、今女性が気候変動対策のプログラムに参加することが重要視されているのだ。
それでは女性は現在、どこまで気候変動対策のプログラムに参加できているのだろうか。どの程度、気候変動問題においてジェンダー平等は進んでいるのだろうか。そうした、問題解決の第一歩であるともいえるデータ化を専門的に行うアプリが登場している。
それが「ジェンダー気候トラッカー(Gender Climate Tracker:GCT)」だ。国際的に女性問題に取り組んできた団体・WEDO(Women’s Environment and Development Organisation)が中心となって開発した。
ジェンダー気候トラッカーは、私たちの手のひらの上で、気候変動対策における女性の参加やリーダーシップなどのデータを入手でき、国別に「見える化」してくれている。
アプリで見れるのは、3つの情報だ。1つ目は、UNFCCC(気候変動に関する国連枠組条約)においてジェンダー平等に関連する決定事項をまとめた報告書。2つ目は、女性の参加データである。アプリ内では、2008年から現在までの気候変動外交における女性参加に関する最新情報を網羅している。国別で交渉代表団や構成機関の男女比や、団長が女性か否かなどがわかる。
3つ目は、各国がジェンダーと気候対策にどのように取り組んでいるかを評価した国別のプロファイルだ。こうしたデータによれば、2008年のCOP14の女性参加率は31%。82%の国の代表団は、女性よりも男性が多くを占めていた。2022年のCOP27では77%と女性の参加はわずかに進んだが、いまだ十分に進展していないとわかる。
このように、アプリによって高度な情報に容易にアクセスできることは、専門家が政策決定や研究に活かすのはもちろん、市民が気候変動対策のプロセスに「参加」することにもつながる。男性ばかりの団体ではなく、これまで周縁化されてきた女性も参加するべきだ。そうした現状にNOを突き付けることが、データを携えた私たちの次なる行動だ。
※1 Astghik Mavisakalyan, Yashar Tarverdi (2019) Gender and climate change: Do female parliamentarians make difference? European Journal of Political Economy.
※2 Invest in Girls and Women to Tackle Climate Change and Conserve the Environment
【参照サイト】WEDO公式ホームページ
【参照サイト】Tracking women’s participation in climate change negotiationsGender Climate Tracker
【参照サイト】Gender Climate Tracker公式ホームページ
【参照サイト】外務省公式ホームページ「WAW!2022コンセプトノート「女性と環境・グリーン社会脱炭素化をジェンダーの視点から考える」」
【参考文献】UNDP(2015)Gender and Climate Change: Impact and Adaptation
Edited by Erika Tomiyama