子どもが都市をデザインしたら、理想のまちのヒントが見える。フィランドの市民参加プロジェクト

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あなたの住むまちは、誰が、誰のためにデザインしたものなのか。現在の大都市のあり方は、車中心で緑が少なく、人にも環境にも優しいとは言えない状況が生まれていることもある。そして、その設計者の多くは、大人、それも男性が多いのが現状だ。

では、女性や障害のある人、子どもなど、より多様な人々のニーズを活かしていくと、まちはどう変わるのだろうか。

オランダ・ロッテルダムを拠点とするアーバンプランナーであるリオール・スタインバーグ氏と、シェアリング・モビリティのアプリを提供する会社「Bolt」は、既存の車中心の都市が子どもたちの遊びに悪影響を与えていると考えた。そこで行ったのが、フィンランド・ヘルシンキに住む5歳から13歳までの子どもたち37人に「都市デザイナー」になってもらう参加型プロジェクト「The Little Big Think Tank」だ。

「ワンちゃん専用の席がある虹色の電車がほしいな」「ロボットがお花を植えたりごみを掃除してくれるような、かっこいいまちがいいな」これらは、実際に子どもたちが思い描いた理想の都市の姿だ。大人がそのユニークな発想を紐解くと、現代の都市の課題が見えてくるという。

このプロジェクトでは、大きなプレイマットを使ってみんなで都市のあり方を考えたり、一人ひとりが欲しいまちを絵に描いたりと、自分たちが暮らしたい都市を自由に想像してもらうワークショップを開催。そして、オンライン上で閲覧できるE-Bookには、子どもたちが描いた絵と、その絵について子どもたち自身が説明した内容、大人がその説明から読み取ったヒントが書かれている。

例えば、8歳のNeeveは、ピンク色の「お城のまち」が理想だと絵で表現した。そのまちには、子どもたちが遊べる場所がたくさんあり、お城の中にも入れる。ただし、「車はお城のまちには侵入禁止」というルールもある。

お城のまち

お城のまち 出典:Bolt

このNeeveの理想のまちは、車を中心にデザインされた都市空間について考える手助けになるだろう。都市の中心部から車を減らすというアイデアは、単なる子どもの空想ではなく、パリやロンドンといった欧州の大都市を中心に世界中で実践されている取り組みだ。車の使用を減らすことで大気汚染や騒音を削減し、反対に徒歩やサイクリングを推奨することで、まちにより活気が生まれることがわかっている。

11歳のTamaraには、いろいろなことを教えてくれる道路「ラーニング・ステーション」というアイデアがある。歩道にスクリーンを設置して、リサイクルの仕方など、地球環境を良くする方法を人々に教えるというのだ。「ごみを分別してくれる特別なごみ箱があってもいいし、近所を歩きながら新たなことを学ぶ機会があるなんて、クールでしょ」と語る。

いろいろなことを教えてくれる道路

いろいろなことを教えてくれる道路 出典:Bolt

このように、子どもたちのアイデアは、一見ファンタジックでありながらも、その中に人や自然にとって本質的に良いまちを作るための、大事なヒントが隠されているのだ。都市の作り手や大人たちにいま求められているのは、このワークショップのように子どもたちの視点やアイデアを可視化したり、さらにはそのアイデアを実際に都市計画に組み込む導線を作ったりすることではないだろうか。

子どもたちの自由な発想が実際に学校として形になった例として、スペイン・マドリードの「レッジョ・スクール」が挙げられる。世界のどこかの都市が子どもたちのアイデアで生まれ変わる日は、すぐそこまで来ているのかもしれない。

【参照サイト】Bolt The Little Big Think Tank
【参照サイト】Bolt invites kids to design human-centric future cities on a playmat
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Edited by Motomi Souma

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