オンラインショッピングの需要が高まる近年、配送業者にお世話になる機会が増えた人も多いのではないだろうか。配送業者側では、人手不足や再配達による負担増加の問題が発生している。そうしたことから、配送会社によっては配送ルートを最適化して不必要な移動を減らしたり、省燃費型トラックを導入したりと、工夫を凝らして環境負荷軽減に取り組んでいるところもある。
ベルギーの都市ゲントは、2030年までに中心市街地の脱炭素化を目指している。そんなゲントが「配送」に関して、あるユニークな取り組みを始めた。
2024年7月1日以降ゲント市では、中心部で配送業務を行う企業が、物流の脱炭素化を促す二つの試験プロジェクトのいずれかに参加できる企画が始まった。プロジェクトの一つは「電動配送車両の無料提供」だ。期間は2024年9月23日から12月13日まで。企業・個人事業主・非営利団体はゲント市内で電気トラックまたはバン、小型電気貨物車、貨物用e-bikeなど、排出ガスを出さない配送用車両を1週間だけ無料で選んで使うことができる。
その際、自治体や専門家によるアドバイスを受けることもできる。例えば、配送時間を最短化するために、最も効率的なルートで配送できるようなアドバイスや、車両の安全性に関するガイダンスサポートなどだ。
もう一つは、いわゆる「ラスト・マイル・デリバリー」を外部に委託すると、補助金が提供されるプロジェクトだ。物流業界で用いられている「ラスト・ワン・マイル」とは、倉庫や配送センター、工場などの拠点から最終目的地まで商品を配送する区間を示す。近年、人材不足問題を抱えている配送業界では、再配達によって余分な燃料費や人件費がかかっているため、そのコストを抑えて宅配効率や生産性を高める必要があるのだ。
そこでゲント市は、ラスト・ワン・マイル向けの排出ガスゼロの配送サービスを利用する費用を部分的または全額カバーする補助金6,000ユーロ(約100万円)を企業に直接提供。そうすることで、企業は環境負荷が小さい方法で商品を届けることができ、配送の際の費用負担が軽くなる。
ゲントの中心部には、建設物流を除いて毎日10,000から20,000個(約1,000トン)の物資が、バンやトラックによって6,000回にわたり運び込まれている。多くの配送サービスが提供されるということは、交通量とそれに伴うCO2排出量にも大きな影響を与えるということだ。
ゲント経済担当市会議員のソフィー・ブラッケさんはthemayor.euのインタビューの中でこのように話している。
「2030年までに、都市の物流を可能な限り廃棄物や温室効果ガスがゼロにしたいと思っています。段階的なアプローチを踏んで、企業に適応する時間を与え、支援を提供することで、環境への影響を最小限に抑えながら、効率的で経済的な物流を構築するための一歩を踏み出しました」
都市部の大気汚染を減らし、サステナブルな物流を推進するゲント市取り組み。これは決して派手なものではないが、実現可能な施策として、他の地域でも導入される日が来るかもしれない。
【参照サイト】Free bike or free money: Ghent helps local suppliers to decarbonize deliveries
【参照サイト】Ghent subsidies help local suppliers decarbonise deliveries
【参照サイト】What Is Last Mile Delivery? Challenges And Solutions For Businesses In 2024
【参照サイト】The 4 smart steps we’re making to support green logistics
【参照サイト】How Transportation Route Optimization Unlocks Fleet Efficiency
【参照サイト】Gent Levert
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Edited by Megumi