ごみ循環、ナッジ、SAFまで。東京・芝浦から“地球を、つなぐ“野村不動産のまちづくり

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Sponsored by 野村不動産株式会社

東京の空の玄関口・羽田空港からほど近い、浜松町・芝浦エリア。オフィスや商業施設などが入る高層ビルが立ち並ぶ街でありながら、海に面し、旧芝離宮恩賜庭園など緑地スペースが点在するなど、都市の中でも開けた空と自然を感じられる場所である。

そんな芝浦エリアで始まっているのが、野村不動産が手がける新たなまちづくりプロジェクト「BLUE FRONT SHIBAURA(以下、ブルーフロント芝浦)」だ。このプロジェクトでは、水辺の魅力を生かし、この街に住む人、訪れる人とともにウェルビーイングで持続可能な街を目指していくという。

果たして野村不動産はこの場所で、どのような未来を描いていくのだろうか。その背景にある哲学とは。今回は、野村不動産ホールディングス・サステナビリティ推進部の小沼雄二郎さんにお話を聞いた。後半では、街区全体でのカーボンニュートラルを実現する具体的なブルーフロント芝浦で始まっている取り組みについて紹介していく。

変化の絶えない時代だからこそ妥協しない「個に寄り添う」姿勢

2002年に誕生したマンションブランド「プラウド」に代表される住宅事業をはじめ、オフィスやホテル、商業施設などを手がけてきた野村不動産。その歴史は1957年までさかのぼり、戦後の住宅難を解決するべく参入したニュータウン開発が最初のミッションであった。

野村不動産の主軸を担ってきた住宅事業では、約20年前から環境対応を進めており、LED照明や節水トイレ、自然エネルギーを活かした「パッシブデザイン」をいち早く取り入れたのも同社だった。環境に配慮しながら、機能性や経済性とのバランスも考慮し、住む人が無理なくサステナビリティを実現できる住まいの開発に取り組んできた。環境面での制約や社会課題への対応が迫られる中でも、野村不動産の「個に寄り添う」姿勢は変わらず一貫している。

住宅部門が掲げる「いつのまにか、いい未来。」というキャッチコピー。|出典:プラウドのサステナビリティ

「個に寄り添う」はこの先も実現し続けられるのか──関連会社も含めた野村不動産グループ全体としては今、これまで向き合ってきた都市に住む人々の豊かさを長期的な視点で捉え直し、「Earth Pride 地球を、つなぐ」をサステナビリティポリシーとして掲げその実現に向けて歩みを進めている。

「地球」というキーワードによってそのポリシーが壮大なものにも感じられるが、その根幹にあるのはあくまでも「人」だと小沼さんは話す。

「『個』に寄り添ってきた私たちにとって、『未来も人が幸せに生きていける社会をどのように実現していくのか』ということが最も重要なミッションでした。どのようにして次世代へ持続可能な地球を受け継ぐかを考えたとき、気候変動をいかに食い止めるかが喫緊の課題だという考えに行きつきました」

東京の水辺・芝浦で始まったまちづくり

そうした「地球を、つなぐ」を体現する取り組みの一つとして始まったのが、東京港区・芝浦で進行中のプロジェクト「ブルーフロント芝浦」だ。芝浦が位置するのは、品川や晴海、豊洲、台場など東京湾を囲む「東京ベイエリア」と呼ばれるエリアの一角。国内外から多くの人が訪れ、まちづくりが進むこのベイエリアを舞台に、東京都は「50年・100年先を見据えて、『自然』と『便利』が融合する持続可能な都市を構想する『東京ベイeSGプロジェクト』」を推進しており、環境課題・社会課題解決に向けた実証が始まっている。

ブルーフロント芝浦では、現在開発が進む2棟のビル(S棟は2025年、N棟は2030年度竣工予定)を中心に、街区全体でのカーボンニュートラルを実現するほか、野村不動産グループが東京・奥多摩町に保有する「つなぐ森」の木材を活用する試みも行うなど、域内や都内での資源循環を生み出すプロジェクトも展開していく。

ここでは、ブルーフロント芝浦ですでに始まっているプロェジクトの一部をご紹介する。

1.「理想の水辺のまちとは?」平日のごみ拾いが、社員と地域住民の接点に

野村不動産は芝浦でのまちづくりに先立ち、2021年3月にはJR東日本や地元町会、地域関係者、行政とともに「芝浦一丁目地区まちづくり協議会」を設立。今年に入り「理想の水辺のまち」を考える未来ビジョンの議論を芝浦一丁目まちづくり協議会を中心に有識者や地域関係者とともに共に行うなど、この街の人々とともにサステナブルな街のあり方や、芝浦の魅力向上に向けた取り組みを進めている。

「芝浦一丁目地区 未来ビジョン検討ワーキング」では、水辺空間の活用事例の共有や、理想的な親水空間のあり方についてディスカッションが行われた(Image via 一般社団法人芝浦エリアマネジメント

また、以前は週末にしか行っていなかった地域清掃を平日にも実施するようになったことで、今まで接点のなかった野村不動産の社員や地域の企業で働く人々でも参加ができるようになった。地域活動に関わった芝浦プロジェクト企画部の担当者によれば、同じ業界どうしで情報交換が生まれたり、若手社員が地域活動にかかわるきっかけとなったりしているという。

1枚目は清掃活動の様子、2枚目左から野村不動産・佐々木氏(芝浦プロジェクト企画部の前任)、芝浦一丁目町会長の岡田氏、海岸二、三丁目町会長の坂井氏

【参照サイト】芝浦を、さらに愛着の持てる場所へ〜町会×企業の、地域清掃の歩み〜

2. ごみ箱の表示を試行錯誤。ナッジの手法を取り入れて分別率を改善

人々がブルーフロント芝浦で過ごす中で、無理なく自然に環境アクションに参加できるような仕組みも構想中だ。

一般的に、ビルのテナントで出るごみはビル全体で回収し、その処理費用はビル側が負担するケースが多い。芝浦プロジェクトでは、ごみ処理の実態を探るために清掃員と一緒にごみ回収作業を体験したことで、多くの場合ごみの再分別が必要であることがわかったという。

そのため、効果的な分別を促すためにごみ箱の表示を工夫し、様々な文言やイラストを組み合わせるなどナッジの手法を取り入れて分別率の改善を検証している。トライアルオフィス内の実証実験の結果、分別を促すポジティブなメッセージが効果的であることが判明し、理解しやすい分別方法のコミュニケーションを模索している。

トライアルオフィスで実験中のごみ分別表示。イラストを添えて、わかりやすい表現になっている。

【参照サイト】なぜゴミを分けるのか?実証実験で見えてきた環境と向き合う小さなアクションの大きな価値

3. マンションで回収する廃食用油からサステナブル燃料を生む「Fry to Flyプロジェクト」

地域で生まれる資源の活用も計画している。その一つが、廃食用油を活かす「Fry to Flyプロジェクト」だ。ブルーフロント芝浦での実証は計画段階だが、野村不動産ホールディングスでは、日揮ホールディングス等が推進する「Fry to Fly」プロジェクトに参画しており、国が掲げる「SAF(持続可能な航空燃料)の国産比率10%達成」に向けて連携を強化している。

「Fry to Fly Project」のビジュアルデザイン(Image via ブルーフロント芝浦

国内の廃食用油排出量は年間約50万トンだが、国内での有効活用は進んでおらず、海外に廃食用油が輸出されSAFとして日本に逆輸入するケースもあるという。野村不動産では、マンションなどで身近な生活者から廃食用油を回収できる強みを活かし、SAFなどの燃料として資源化するプロジェクトを他の地域で試験的に推進している。

ブルーフロント芝浦では、運河に面した立地を生かし、ベイエリアをつなぐ新たな交通手段として船の活用も進めている。今後は、舟運用のバイオディーゼル燃料としての活用を目指すなど、エリア内で出る廃食用油をエリア内で活用する循環の仕組みの構築も模索していくという。

【参照サイト】デベロッパーならではの強みを活かし、廃食用油を使った航空燃料プロジェクト「Fry to Fly Project」に携わる

4. 生ごみから肥料と電気を生み出す仕組みづくりで、食と農をつなぐ

入居者専用カフェやワーカー向け職域食堂でどうしても出てしまう食品廃棄物は、運営事業者や株式会社Jバイオフードリサイクル(以下、Jバイオ)などと連携し、「肥料」と「電気」へと生まれ変わらせる。食品廃棄物を発酵した際に出る残渣から液肥を製造し、Jバイオは液肥を農家へ販売する。その肥料を使用して栽培した農作物が飲食店や小売業者に提供され、食と農のループができるというわけだ。

同時に、食品ロス削減への取り組みとして、飲食施設におけるごみの発生原因別の計量・分析や、それに基づく提供メニューの見直しや量の調整を行うなどの改善策を施設側とともに進めていく。

株式会社Jバイオフードリサイクル 横浜工場のガスタンク。食品廃棄物のメタン発酵によりガスを発生させ、そのガスで電気を生み出す(左)Photo by Tomoya Sugo  / ここで生まれた肥料は田畑で使用され、育った農作物が飲食店や小売店に渡る(右)Image via Shutterstock

【参照サイト】捨てていた「生ごみ」を肥料と電気に。芝浦からはじまる持続可能な街づくりへの一歩

5. “東京の森”からやってきた木が、都心の空間を支える「循環する森づくり」

東京都内での「地産地消」の取り組みも進めていく。野村不動産グループでは東京・奥多摩町で森を保有しており、「地球を、つなぐ」を実現する代表的なプロジェクトとしてその森の管理・利活用を行っている。「つなぐ森」と名付けられたその森では、高齢化した樹木の伐採、造林保育を通じて森の若返りを図り、専門家の指導のもとで希少な生物の保全活動にも取り組むなど、森を適切に管理しながら、事業を展開する都市エリアで木材を活用する「循環する森づくり」を実践している。

野村不動産グループが掲げた「ランドスケープアプローチ」(※1)の図|Image via 野村不動産ホールディングス

「つなぐ森」生まれの木材は今後、ブルーフロント芝浦など、主に都心部の野村不動産グループの物件で活用されていく予定だ。現在では、ブルーフロント芝浦内に設けられた同グループの本社トライアルオフィス(※2)ですでに木材が内装材として活用されており、社員からは東京の木材が使用されていることへの驚きの声もありつつ、親しみや温もりを感じるという面で高い評価を受けているという。今後、オフィスラウンジの壁面ルーバー(イメージパース右側)などの空間に使用される予定だ。

オフィスラウンジの壁面ルーバー(画像右側)に「つなぐ森」の木材が使用される予定。

※1ランドスケープアプローチとは、一定の地域や空間において、主に土地・空間計画をベースに、多様な人間活動と自然環境を総合的に取り扱い、課題解決を導き出す方法のこと(「生物多様性国家戦略 2023-2030」より)。
※2現在新宿にある本社を芝浦へ移転することを念頭に、試験的に様々な働き方を試すためにブルーフロント芝浦内で運用しているオフィス。

【参照サイト】都会と「東京の森」をつなぐ。芝浦で奥多摩の木を使うワケ

ここまでご紹介したように、東京・芝浦では、この街に住む人々やこの街にかかわる企業、この街を訪れる人々、さらには森をはじめとする東京の自然とともにプロジェクトが進められている。「ブルーフロント芝浦」ウェブサイトでは、他にもブルーフロント芝浦で展開されていく取り組みについてや、今回触れた5つのプロジェクトについて詳しく紹介している。

実験的な水辺のカルチャーを育み、人や地域、地球を「つなぐ」街を目指して

水辺は都市を育て、育んできた。

水辺には、人々が集い、にぎわいを生み出す力がある。世界に目を向ければ、運河や港が都市の生活に深く根付いているオランダのアムステルダムやデンマークのコペンハーゲンなど、水辺の豊かさを享受して発展してきたサステナブルシティが各地に存在している。水辺は暮らしを豊かにするだけでなく、実験的なカルチャーを生み出し、そこにある課題を解決する力をももたらす。

「ごみ問題からブルーカーボンまで、川や海などの水辺には様々な社会課題、そしてそれを解決する可能性があります。この芝浦という街にかかわるプレイヤーとしてその課題に向き合っていく責任があると感じます。水辺の恵みを生かしたまちづくりをしていきつつ、この実験的な街で、働き、遊び、憩う人々とともに『地球を、つなぐ』の実現を目指していきたいと考えています」

サステナビリティ推進部の小沼さんはそのように話す。

創業から揺るがず「人」に寄り添ってきた野村不動産は、このような期待を背負い、どのようなまちづくりを進めていくのだろうか。東京の水辺の街のこれからに注目したい。

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