古本を買っても、著者に利益を還元できる。英国で本の再販を促す「Bookloop」

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物価が上昇し続ける今、どれだけの人が、本を書店でためらわずに買うだろうか。中古本を購入したり、少し待って図書館で借りたりする人もきっと少なくないはずだ。

しかし、Amazonなどの中間業者を通して古書を購入すると、その書籍の著者には印税が入らない。たとえその本を書いてくれたことに感謝の意を示したくても、古書の購入ではそれが難しいのだ。では、読者、書店、著者のすべてにとって喜ばしい古本買取システムは、どうすればつくれるのだろうか。

そうした問題に立ち向かう組織がある。大手サイトに代わるエシカルなオンライン小売業者として、2020年に設立されたイギリスのBookshop.orgが、今回「Bookloop」という古本オンラインプラットフォームを立ち上げたのだ。

Bookloopの仕組みはこうだ。まず、読者が不要になった本をアップロードし、オンライン査定を受ける。そして査定を通った書籍は、特定の配送会社の集荷ポイントに預けるか、その配送会社に自宅まで取りに来てもらうかを選択する。利用者は本を手放すことで、ウェブ上で使用できるクレジットをもらったり、より愛着のある小説と交換したりすることも可能だ。

また、Bookloopから古本を購入すると、古書流通でも著者にその一部が還元される。蓄積された印税は、著者協会(SoA)およびAuthors’ Licensing and Collecting Societyとの取り決めにより、共有の著者基金を通じて著者に分配される。Drusilla Harvey Access Fundと呼ばれるこの基金は、著者が必要とする旅費や育児費などをカバーする助成金を提供するものだ。

Bookloop上で登録された古本はAmazon傘下のウェブサイトでは販売されず、他のオンライン・マーケットプレイスで取引される。サイトを運営するのは、イギリスやフランス、ドイツ、オーストリア、スウェーデンで事業を展開し、1日に1万冊以上の本を処理している買い取りプラットフォームZeercle社だ。

Bookshop.orgによると、Zeercleに売られた本のうち、再販されずに終わるのはわずか2%で、余った本のほとんどは地元の慈善団体に寄付される。Zeercleの共同設立者兼CEO(最高経営責任者)であるエリック・ガニェール氏は、The Guardianの取材で次のように述べている。

本に第二の人生を与えることで、廃棄物を減らすだけでなく、独立系書店を支援する読者のコミュニティを育成しています。この取り組みは、環境と地域経済の双方にとってWin-Winです。

一つ注意すべきなのは、Bookloopでは一部の本が査定システムによって拒否されることだろう。システム上のメッセージによると、それは「古本市場での価値が低すぎるか、すでにその本が多すぎる」ためだという。Bookloopに参加するには、読者は少なくとも5ポンド(約950円)相当の本を売らなければならない。

それでも、ファッションやレコード、家具などの中古店やチャリティショップが多く存在するイギリスでは、「善意」と「もったいない精神」で循環させる再販売システムが文化となり、人々の暮らしに浸透している。

ならば、衣類や家具などと同様に、書籍もコミュニティを循環するようになるかもしれない。コストを障壁とすることなく、著者にも利益がもたらされる中古本のオンラインプラットフォームを利用することは、より多くの人の手に本を届ける一つの良い方法となるのではないだろうか。

【参照サイト】Bookloop
【参照サイト】Bookshop.org launches buy-back scheme for secondhand books
【参照サイト】Read, swap, repeat: secondhand book recycling platform launches in the UK
【参照サイト】Bookshop.org launches Bookloop, a buy-back scheme that benefits authors
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Edited by Megumi

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