技術開発2社が「自然資本業務提携」。あらゆる生き物に優しい、都市の森を目指して

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本業の電気工事業の傍ら「宇宙のミライにワクワクする」を掲げて地球・ヒト・デンキの共生を目指す取組みを行うソウワ・ディライトと、マイクロバイオームのゲノム解析を用いて生活空間の微生物の多様性を高め、健康で持続性のある暮らしの実現を目指すBIOTA。この2社が2024年8月に「自然資本業務提携」を締結した。

業務提携とは、研究開発、原材料調達、生産、物流、販売など特定の業務分野における複数企業による協力関係を指すが、この2社による「自然資本業務提携」はこれら一般的な業務提携とは趣が異なる。

2社はプレスリリースのなかで、「自然資本業務提携とは事業者が保有する自然資本の拡大や有効活用を目的とした事業者同士の自然資本のシェア」と定義し、その狙いを「経営の持続可能性を高め、中長期的な社会や地域課題の解決に寄与すること」と述べている。

具体的な取組みとして挙げられているのが以下の4点だ。

  • 微生物、ロバやヤギ、馬などの企業における人類以外のステークホルダーの採用を拡大し、企業のマルチスピーシーズ化を加速
  • ソウワ・ディライトの保有するcoco no mori(本社敷地内の森)の生物多様性の拡張および付加価値の向上
  • 子どもたちの教育、遊びにつながるサードプレイスの創出
  • 自然資本のシェアリングの事例と活用例の創出

群馬県前橋市に本社を置くソウワ・ディライトは、かねてから地域社会への貢献の一環として本社敷地内にある森「coco no mori」を開放し、子どもたちがロバなどの動物と触れ合いながら、自然の中で遊べる場を提供している。そこにBIOTAの微生物に関する知見を活かした学びの機会が加われば、「coco no mori」の自然資本としての価値はより一層高まるであろう。

株式会社BIOTA

Image via 株式会社BIOTA

株式会社BIOTA

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自然資本に関する情報開示のグローバルスタンダードであるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)では、生態系サービスを「経済活動やその他の人間活動に利用される便益に対する生態系の寄与」と定め、さらに生態系サービスを、農作物、木材、水などを供給する「供給サービス」、 水流調整や気候の調節などの「調節・維持サービス」、そしてレクリエーションや観光の機会などの「文化的サービス」の3つに分類している。

自然資本を巡る企業の活動は、涵養による地下水の保全、植林によるカーボンクレジット創出、環境負荷の低い冷房への切り替えなど、「供給サービス」や「調節・維持サービス」に関する取組みが主体である。そうした中で、BIOTA・ソウワ・ディライトの「文化的サービス」に該当する取組みは非常に興味深い。

冒頭に紹介したとおりソウワ・ディライトの本業は電気工事業であり、「coco no mori」の活動が直接的に当社の利益に貢献するわけではなく、むしろ維持経費だけを見ればマイナスかもしれない。しかし、長期的な視点でとらえれば、働く社員のエンゲージメント向上や優秀な人材の確保、地域社会での知名度・レピュテーション向上による市場シェア獲得などが期待でき、プレスリリースで述べた経営の持続可能性向上に結び付くであろう。今後の「自然資本業務提携」の成果に注目したい。

【参照サイト】BIOTA inc.
【参照サイト】株式会社 ソウワ・ディライト|電気工事(群馬県前橋市) (sowadelight.com)
【参照サイト】まちの森づくり事業の推進に向けてソウワ・ディライトと自然資本業務提携 | 株式会社BIOTAのプレスリリース (prtimes.jp)
【参照サイト】企業が地域課題に取り組む ソウワ・ディライトが「あきち」(K)|前橋発、新しい風 「めぶく」街 。前橋の様々な話題を取り扱う前橋新聞-mebukuです。
【参照サイト】自然関連財務情報開示-タスクフォースの提言_2023.pdf (tnfd.global)

Edited by Erika Tomiyama

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