私たちの周りには、生活を便利にし、快適にするためのプロダクトで溢れている。しかし、もし「不快さ」を重視したプロダクトが生まれたら──それは私たちの視点にどのような変化をもたらすのだろうか。
匿名のデザイン集団・Capitalism(「資本主義」の意)は、快適性を前提とする日常のデザインに揺さぶりをかけるテーブル「The Uncomfortable」を発表した。
日本語で「不快」を意味するこのテーブルは、長さ2.75メートル、厚さ4センチメートルの1枚の天板に、34本もの脚を備えたまさに型破りなデザインだ。34本の脚の半分以上はCapitalismが設計・製造したものだが、残りは既製品を使用し、そのうちのいくつかは人気のテーブルのデザインを採用している。
木材だけでなく、クロムメッキ、亜鉛メッキのスチール脚などがランダムに加工され、周りのどの場所に座っても不快感を与えるよう戦略的に設計されたこのテーブル。Capitalismは、多様な素材を使うことで、一つの作品の中にさまざまな種類のテーブルの要素を表現することを目指した。
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Capitalismのメンバーは自らを「現代社会の矛盾について考察し、疑問を投げかける集団である」と説明している(※)。この“不快な”テーブルは、(Capitalismが拠点を置く)スペインの家庭において、しばしば特定の誰かが不便な位置に脚がある場所に座らなければならないという問題から着想を得てつくられた。「机の脚が邪魔な場所にあって座りにくいな」と思う体験自体を、誰もが“平等に”体験できるようにしたのだ。彼らは皮肉な方法で社会の不公正を表すことで、日常生活における空間、機能、デザインの役割についての考え方に疑問を投げかけている。
現代社会の矛盾にスポットを当て、彼らの不快感や不便さを分け合うことで、新しい価値観を生み出したこのテーブルは、現代社会における差異と共生をユニークに表象しながら、デザインの役割を再考するきっかけを提供していると言えるだろう。自分にとっての当たり前の基準や価値観が、他者にとってどう感じられるものか。まず思考することが利他的行動の一歩であることを忘れてはならない。
※dezeen.com Capitalism debuts 34-legged table that “democratises discomfort”
【参照サイト】magzoid.com Capitalism Unveils ‘The Uncomfortable’ Table with 34 Legs
【参照サイト】THE UNCOMFORTABLE
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Edited by Megumi