サッカーユニフォームのデザインに隠された、命をつなぐ「黒い点」の意味

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ブラジルのサッカークラブ・ボタフォゴのユニフォームに、ある日、直径4ミリ程度の黒い点が現れた。大半の人が見過ごしてしまうような小さな点がユニフォームにデザインされたのはなぜなのだろうか。

実はこちら、ブラジルのある社会課題への「気づき」を促すキャンペーンとして実施されたものだった。

ブラジルでは毎年、皮膚がんの一種であるメラノーマ(悪性黒色腫)の症例が約6,000件報告され、その数は増加傾向にある(※)。皮膚がんの中でも最も危険とされるメラノーマは、早期発見で90%以上が治癒可能だが、見過ごされると命を脅かす深刻な病となってしまう。しかし、目立たない初期症状が見逃されてしまうことも多く、発見や治療が遅れるケースも少なくないのだそうだ。

このキャンペーンは、ユニフォームの黒い点を、静かに忍び寄るメラノーマの脅威と重ね合わせ、「小さな異変が命に関わる」という事実を、理屈ではなく感覚で伝えたのである。

このアイデアは広告代理店End to EndとÁrea 23、そしてメラノーマ・ブラジル研究所が共同で考案し、ボタフォゴの12試合にわたって「誰にも見えなかったスポンサー」というキャンペーンとして実施された。選手が直接的に言葉で訴えるのではなく、ユニフォームという見慣れたものの中に変化を紛れ込ませること、しかもそこに大々的にスローガンを入れるのではなく「ほとんど見えないように」設計することで、人々が「自ら気づく」体験ができるようデザインされていたのだ。後に「黒い点」の真相が明かされると、観客やメディアの間で大きな反響が広がった。

観る者の意識に静かに、しかし強く訴えかけたこちらの取り組み。目立たない小さな異変を放置すれば命に関わる──その事実を多くの人に直感的に理解させた。

私たちは、目立つものばかりに気を取られ、見えづらいものを見落としがちだ。ユニフォームに現れたほんの小さな黒い点は、そのことに気づかせてくれる大きなきっかけとなった。

Câncer de pele melanoma

【参考サイト】O patrocínio que ninguém viu
【参照サイト】“O patrocínio que ninguém viu”: Botafogo adiciona mancha no uniforme para conscientização do câncer de pele
【参照サイト】O patrocínio que ninguém viu: Botafogo e ONG Melanoma Brasil realizam ação inovadora em combate ao câncer de pele – FogãoNET
【参照サイト】Botafogo se une a la lucha contra el cáncer de piel – AS.com
【参照サイト】An Invisible Spot, a Powerful Message: How Brazilian Football Raised Awareness About Melanoma

Edited by Yuka Kihara

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