修理体験が、生きた学びに。学生がPCをリペアし寄付する、NZのデジタルデバイド解消プロジェクト

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「まだ使えるけど、新しい機種が出たから」そんな理由で、スマートフォンやPCを買い替えた経験はないだろうか。

私たちの生活に欠かせない電子機器。しかし、その裏側では、手放されたデバイスの多くが適切なリサイクルもされないまま電子廃棄物となり、地球環境へ負荷をかけ続けている。一方で、経済的な理由から、学習や仕事に不可欠なデバイスを手に入れられず、情報社会の恩恵から取り残される人々もいる。

この、一見別々に見える二つの社会課題に対して、ニュージーランドの若者たちが、創造性と行動力で挑んでいる。それが、使われなくなったPCを修理し、必要とする人に無償で提供する「Recycle A Device(RAD)」プログラム。未来を担う世代が技術を身につける実践的な学びを通して、コミュニティにも貢献できる取り組みだ。

非営利団体「Digital Future Aotearoa」によって運営されているRADでは、企業や個人から寄付された古いPCを、学生たちが修理・再生し、それを必要とする人々に届けている。

仕組みはこうだ。不要になったPCがRADに寄付されると、学生メンバーは専門家や指導者のもと、ハードウェアの診断や修理、ソフトウェアの再インストールなどの実践を通して技術を学ぶ。このプロセスは、単なる作業にとどまらず、STEM(科学・技術・工学・数学)教育の一環として位置づけられている。蘇ったPCは、地域のパートナー組織を通じて、それを最も必要としている家庭や個人へ無償で提供される。

2024年には、658人の「ランガタヒ(マオリ語で若者の意)」がこのプログラムに参加し、合計2,920台のPCがコミュニティに届けられた。これにより、5.8トンもの電子機器が埋め立て処理されることなく再活用され、新たな命を吹き込まれているという(※)

RADは、「壊れたら捨てる」ではなく「直して使い続ける」という価値観を若者たちに浸透させる文化的な転換でもある。実際に自分の手で「壊れたもの」を「役立つもの」へと生まれ変わらせる経験は、達成感と自信を育み、創造性や問題解決能力の土台となっていく。

今後、RADプログラムがさらに広がり、より多くの若者と地域社会に希望と機会をもたらすことが期待されている。「修理する心」と「分かち合う精神」は、より公平で持続可能な未来を築くためのたしかな礎となるだろう。

【参照サイト】 Laptop repair workshops are diverting waste while upskilling kiwi kids
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