人権問題
人権とは?(What is human rights?)
「人権」とは、すべての人が生まれながらにして持っている基本的な権利です。国連では人権を「人種、性、国籍、民族、言語、宗教、社会的地位にかかわらず、生まれながらにして認められるべき権利」と定義しています。また、人権は「生命や自由に対する権利、奴隷状態や拷問からの解放、意見をすることや表現することの自由、働く権利や教育を受ける権利などが含まれる」としています。人権に関して国連を中心に、文化的、経済的、政治的、および、社会的権利といった、国際的に受け入れられる幅広い権利が定義され、これらの人権を保護するための活動が行われています。
これに対し「人権問題」とは、人権が侵害される、または、人権が尊重されない状態であり、国家と個人、社会と個人、個人と個人の間など様々な状況で起こりえます。人権侵害が起こる原因としては、武力紛争や民族弾圧、難民状態、人種差別、言論に対する弾圧、性・性的指向・性自認に関する差別、劣悪な雇用環境などが挙げられます。
第二次世界対戦以前の数々の虐殺や迫害など、人権が軽視された歴史の反省から、1948年12月10日の国連総会にて、「世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights)」が採択されました。その後、国際人権規約を含む多くの人権条約が締結され、これら条約の総称である「国際人権法」の範囲も拡大しています。12月10日は、「世界人権デー」として、世界中で様々な記念行事が行われています。
現代の人権問題
しかし、世界人権宣言から70年経った現在も、世界中で様々な人権問題が起きています。事例を幾つかご紹介しましょう。
近年、デジタル社会における個人情報保護の重要性が注目を集めています。個人情報とは、身体、住所、財産、政治的思想、宗教的思想など個人のアイデンティティを形成する情報であり、個人情報の開示・使用の判断を含めて、個人に帰属するものです。しかし、個人情報が保護されない状態では、個人の行動や表現の監視、自由な思想に対する介入といった人権侵害や、個人情報の政治的・社会的悪用による生命の危険といった恐れもあります。
例えば、2016年のアメリカ大統領選挙の際、英国ケンブリッジ・アナリティカ社が約5,000万人のFacebook利用者の個人情報を不当な方法で収集し、共和党陣営のデジタル選挙活動に利用した疑いが持たれています。また同社は、2016年のイギリスのEU離脱国民投票時も、EU離脱派の選挙活動に不当に収集した個人情報を利用した疑いが持たれています。
こういった個人情報の悪用と人権問題に対する懸念が高まり、2018年5月にEUで「一般データ保護規則(GDPR)」というEUを含む欧州経済領域(EEA)域内の個人情報保護を強化する規則が施行されました。EU域内の個人情報を扱う場合、企業、政府、いかなる組織も、その目的や手段を明確に説明する事、本人の同意を得る事、個人情報の安全性を確保する事などが求められており、違反した場合は高額の制裁金が課されるようになりました。
日本でも身近な人権問題の例として、「#MeToo運動」が世界中で話題になりました。2017年、米国の映画プロデューサー、ワインスタイン氏による女優達への性的虐待が明らかになったことを受け、ハリウッド女優達が「セクハラや性的虐待を見て見ぬふりをするのはやめよう」と声を上げ始めたことがきっかけで始まりました。同様の被害に遭った女性達が、この運動に賛同しました。セクハラや性的虐待という、被害者の人格を否定し、身体的、精神的に傷つける行為を根絶しようと、いまや国境や産業の垣根を越えて各地で運動が広まっています。
また、日本では「働き方改革」の必要性が声高に叫ばれています。これは、長時間労働、サービス残業や、強制的な異動や転勤といった、労働者に負担を強いる劣悪な労働環境を見直し、これまで軽視されてきた労働者の健康や生活の質を守ろうという取り組みです。リモートワークや、時短、育休取得など働き方の多様性を認め、性別、年齢、家族の有無、障害の有無など様々な状況に応じて、労働者自身が働き方を選択できる社会を実現するための取り組みと言えます。
数字で見る人権問題(Facts&Figures)
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[世界の人権状況]
- 世界の難民・国内避難民・庇護希望者数:7,080万人(2018年 UNHCR)
- 世界の児童労働者数:15,200万人、うちアフリカ地域19.6%と顕著(2016年 ILO)
- 世界の若者の識字率:過去20年で若者の識字率83%から91%に上昇、非識字者数は17,000万人から11,500万人に減少。しかし非識字者のうち59%は若年層の女性です。(UNICEF)
- ”現代の奴隷者”数(強制労働、労働による債務返済(役身折酬)、強制結婚、その他奴隷、奴隷のような慣習、人身売買を含む):推定4,000万人(2017年 ILO)
- 世界の児童兵士のリクルート件数:判明している範囲で、2012年は12カ国3,159件に対し、2017年は15カ国8,185件と、159%増加(2018年 Child Soldiers International) [主な国連の人権条約の締約国数](2018年時点)
- 女性差別撤廃条約:189ヶ国(日本締約)
- 児童の権利条約:196ヶ国(日本締約)
- 強制失踪条約:59ヶ国(日本締約)
- ジェノサイド条約:150ヶ国(日本未締結)
(概要)男女平等の実現に向けて、女子に対するあらゆる差別を撤廃するための条約です。
(概要)18歳未満の子どもが、おとな同様に一人の人間として人権を持つこと、そして成長のために必要な保護や援助を十分に受ける権利を認めた条約です。
(概要)国の機関などが、個人の自由を剥奪し、失踪者の所在を隠蔽し、法の保護の外におくことを強制失踪と定義し、強制失踪からすべての者を保護するための条約です。
(概要)平時、戦時問わず集団殺害は国際上の犯罪であることを確認し、防止し、そのような犯罪を処罰するための条約です。
人権問題の原因(Causes)
人権問題は下記のことが原因で、国家と個人、社会と個人、個人と個人の間など様々な状況で起こりえます。
- 戦争、紛争
- 貧困問題、格差
- 社会的、文化的、宗教的に形成された意識や考えから生まれる差別
- 教育機会の欠如
また、人権を保護するべき政府が機能していない場合や、人権状況をチェックし人権を擁護する専門機関や市民社会の不在も、人権問題の解決を遅らせ、悪化させてしまう要因の一つです。
人権問題はなぜ問題なのか?(Impacts)
人権は、一人一人が人間らしく生きるために必要不可欠で平等な権利です。人権の侵害や軽視による、個人の人生への影響は計り知れません。生命そのものが危険にさらされる場合もあります。
また、人権問題をそのままにしておくと、人権を軽じる風潮が醸成され、次世代以降も人権問題が繰り返される危険性があります。
- 個人の生命に関わる危険
- 個人の人格の否定
- 個人の身体、精神に与える損害
- 人権軽視の風潮の醸成
- 人権問題が次世代に引き継がれ、繰り返される危険性
人権問題のためにできること(What We can do)
人権問題というと遠い国の話、難しい話のように聞こえるかもしれませんが、身近に起きている問題でもあります。まずは普段の生活でできることから始めましょう。
- 一人一人の多様性を受け入れる
- 職場、学校、家庭など身近な環境における人権問題に意識を向ける
- 人権を軽視する企業や団体を支援しない、商品を買わない
- 国際機関やNGOを通し、脆弱な立場にある人々を支援する
- 人権問題に関する知識を広める
人権問題に関する団体(Organization)
人権問題を解決するアイデアたち(Ideas for Good)
IDEAS FOR GOODでは、最先端のテクノロジーやユニークなアイデアで人権問題の解決に取り組む企業やプロジェクトを紹介しています。