難民問題
難民問題とは?(What is Refugee crisis)
難民問題とは、難民(人種や宗教、国籍、政治的意見、特定の社会集団に属するなどの理由から自国で迫害の恐れがあるために他国に逃れた人々) (※1)に関する社会的・政治的な問題のこと。
※1 難民の地位に関する条約(難民条約)より
政治的な迫害の他、紛争・戦争によって自国を追われた人々や、気候変動の影響による干ばつや異常気象などで、住んでいた場所から離れなくてはならない人々も、広義に難民とみなされています。また、住まいを失ったが国内にとどまっているもしくは国境を超えずに避難生活を送る人々は「国内避難民」と呼ばれ、難民同様に支援を必要としています。
難民が生まれる背景には、政治体制や歴史、宗教、文化などが複合的に影響しており、一国だけでは解決できない世界規模の課題になっています。
難民問題に関する事実(Facts & Figures)
難民に関する数字と事実をまとめました。
- 2022年5月までに、世界中で1億人以上の人々が避難を余儀なくされている(UNHCR Grobal Trends 2022)
- 世界の難民の約3分の2は、シリア、アフガニスタン、南スーダン、ミャンマー、ソマリアなどアジア圏で発生している(UNHCR Grobal Trends 2021)
- UNHCRが管轄する難民の83%を「低・中所得国」が受け入れている(UNHCR Grobal Trends 2021)
- 世界で最も多く難民を受け入れているのはトルコだが、国民1人あたりの難民の受け入れ数が最も多いのはレバノン(8人に1 人)(UNHCR Grobal Trends 2021)
- 先進国の中では、アメリカへの新規申請の率が一番高く(18万8,900 件)、それにドイツが続いている(14万8,200 件)(UNHCR Grobal Trends 2021)
- 2021年、日本における難民認定申請者数は、2,413人。うち、約52%に当たる1,248人が、過去に難民認定申請を行ったことがある申請者(2022年 出入国在留管理庁)
- 2021年、日本における難民認定者数は74人。難民とは認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた外国人が580人(2022年 出入国在留管理庁)
2022年現在、世界の難民数は、第二次世界大戦以降、もっとも高い数字を記録しています。難民の受け入れ国は発展途上国が多くを占めており、発展途上国に重い負担がかかっていることがわかります。
日本においても、多くの難民申請者が存在するものの、実際に難民認定される人の数は他国と比べて非常に少なく、難民の受け入れに消極的だとしばしば批判されています。
難民問題が存在する理由(Causes)
難民を生む原因は様々ですが、主な原因としては以下が挙げられます。
- 祖国での紛争や内戦
- 政府の脆弱化や不安定な国内情勢
- 生存を脅かす貧困
- 迫害や人権侵害、暴力
- 自然災害や気候変動
上記の中でも、紛争や内戦による難民の発生は深刻な問題となっています。シリアやアフガニスタン、南スーダンなどの国では人種や宗教の対立をめぐる武力紛争が相次ぎ、国の統一を保てない状態にあります。紛争により国が脆弱化し、政府が国民を守る責任を果たせないため、国民は自分や家族の身の安全を確保するため外国に逃れざるを得なくなっているのです。例えば、2011年から続くシリア内戦では、1,200万人が難民として国外に逃れています。最近では、2022年2月にロシアがウクライナを侵攻して以降、およそ1,300万人が故郷を追われ、700万人以上が国境を越えて欧州へと避難しています。日本でも各地で「ウクライナ避難民」の受け入れが進められています。
また、ジェンダーや政治、宗教に関して迫害を受け、他国に逃れる人も多くいます。例えば、民主化活動に参加したことや改宗したこと、同性愛者など性的的マイノリティであることなどを理由に命の危機を覚え、逃れる人がいます。なかには、反政府活動をしているグループと同じ地域に暮らしているだけで、「反政府」とみなされて迫害されるケースもあります。
その他、自然災害や気候変動などの環境問題により、自国から移動を強いられる「環境難民」の存在も深刻化しています。現在、環境難民は、難民条約に基づく難民の定義には当てはまりません。しかし、気候変動により、もといた地域や国に住めなくなり移動する人が出てきているほか、そうした移動が原因となり、紛争に繋がることもあります。環境問題と難民問題は切り離せない問題と言えるでしょう。
難民問題に関する諸問題(Impacts)
難民問題にまつわる主な問題の一例として、下記が挙げられます。こちらは、主に難民の受け入れ先での問題となります。
- 難民受け入れの発展途上国への負担偏り
- 自国民の安全と、難民の受け入れのジレンマ
- 偽装難民の発生
現在、難民の約8割は隣国の国に避難していると報告されています。しかし、避難先の国々においても、経済的、衛生的に整っていなかったり、受け入れの体制が準備できていなかったりと、難民の人々にとって苦しい生活が待っているケースも少なくありません。また、難民の受け入れに関して途上国に大きな負担がかかっていることも指摘されており、国際社会での責任の分配が急務とされています。
難民という存在が社会で注目され、難民と欧米諸国の関係を大きく揺るがした出来事として、2015年の難民危機があります。当時、1年間で約100万人もの人々が、欧州に助けを求めて殺到しました。特に、難民を乗せたボートが転覆し、トルコ沖に打ち上げられた男の子・アラン君の写真が欧州を中心に世界中に衝撃を与え、イギリスでの難民受け入れを大きく前進させました。ところが、2015年11月、フランス・パリで発生した同時多発テロでは、後の報道でテロの実行犯の中に難民に紛れた人物がいたことが明らかになり、また、当時のトランプ政権をはじめとした先進国の「自国第一主義」の台頭も相まって、難民への風当たりが強くなりました。難民を受け入れる側の国々では、自国民に対する安全性の確保と、難民への配慮との間で揺れ動いています。
また、本来難民には当てはまらない人が難民を装い、外国に渡り在留や労働の権利を得ようとする「偽装難民」の存在も問題視されています。偽装難民による難民申請数が増加することで、本来手を差し伸べるべき難民への救済が遅れているということも指摘されています。
難民問題を解決するためにできること(What We Can Do)
難民問題を少しでも解決するために、私たちができることは何なのでしょうか?日本にいながらでも難民の人たちのためににできることは多くあります。
- 国際機関やNGO、NPOを通した難民支援
- 難民支援への寄付
- 難民に関する知識を広める
難民問題への解決に向けて活動する国際機関「UNHCR」を筆頭に、日本でも支援団体の窓口から募金や物資支援をおこなうことができます。まずは、難民問題を遠い国の問題として捉えるのではなく、自分ごととして難民問題の現状を知ることから始めましょう。難民に関して得た知識を家族や友人など身近の人に伝えてみることも立派なアクションになります。
難民問題に関する国内・国外の団体(Organization)
難民問題を解決するアイデアたち(Ideas for Good)
IDEAS FOR GOODでは、最先端のテクノロジーやユニークなデザインで難民問題に関する問題解決に取り組むプロジェクトを紹介しています。