「難民」を1,000通り以上で定義した辞書が、大英図書館に収蔵

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2021年6月にUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が発表したレポートによると、2020年末時点で、紛争や迫害などにより故郷を追われた人の数は8,240万人だったという。(※1) このうち「難民」と呼ばれる人は何人いるか、わかるだろうか。

正解は2,640万人。この他に、国境を越えていないため国際条約で難民として保護されない「国内避難民」が4,800万人、故郷から逃れて他の国で庇護申請を希望する「庇護希望者」が410万人いるという。UNHCRは難民だけでなく、国内避難民や庇護希望者も支援している。

言葉の厳密な定義を知ろうとしなければ、私たちが見落としてしまう人がたくさんいる。たとえば、難民という言葉だけを追いかけて、難民と同様の支援を必要とする国内避難民の存在を見落としてしまうかもしれない。

UNHCRは、私たちひとりひとりが「難民とは誰だろう」と考えるきっかけにしてほしいとの想いから、様々な人が定義した難民の意味を「The Refugee Dictionary(難民の辞書)」にまとめる取り組みを行っている。

この取り組みは2021年6月に始まり、UNHCRは難民、家族が難民だった人、難民の友人がいる人、難民にインスピレーションを受けた人などに、”個人的な体験”に基づいた難民の定義を提出するよう呼びかけた。他の人が知らない、難民のストーリーを共有してもらうことが、このプロジェクトの目的だ。こうして集まった様々な定義がThe Refugee Dictionaryに載り、2021年7月に公開された。

この辞書は、紙版が大英図書館に収蔵されており、デジタル版はUNHCRのウェブサイトから閲覧できる。また、ここに自分が考えた定義を追加したい人は、引き続きUNHCRのウェブサイトから提出することが可能だ。

The Refugee Dictionaryを見ると、1951年に採択された「難民の地位に関する条約」に記載された難民の定義の後に、約140ページにわたって人々が提出した定義が並んでいる。以下、そのほんの一部を紹介する。

「難民とは、私の父親だ。」
「難民とは、もし状況が変われば、私かもしれないし、あなたかもしれない人だ。」
「難民とは、バイオリンを習い始めた11歳だ。」
「難民とは、見知らぬ人に歓迎される運命にある人だ。」
「難民とは、私が一緒にお茶をする人だ。」

refugee_dictionary P39, 56, 63, 115, 128

The Refugee Dictionaryは、1951年難民条約の採択から70年が経ったことを記念して行われたプロジェクトだ。この条約は、UNHCRの活動の基礎となる法的文書であり、そこに載っている難民の公式な定義を知ることは、もちろん大切だ。

一方で、難民のことを「他国に庇護を求める人」「大きな袋を抱え、陸路で逃げてくる人」「難破船に乗って逃げてくる人」といったイメージだけで捉えていると、私たちの身近な場所にいる難民を見落としてしまうかもしれない。難民は、あなたの職場の同僚かもしれないし、あなたのクラスメイトかもしれないのだ。

難民には、受け入れ国で安全を確保する権利があるのはもちろんのこと、思想の自由、働く権利、教育を受ける権利もある。日本にも他の受け入れ国にも、前を向いて生きようとする難民がいることを、忘れないでいたい。

※1 数字で見る難民情勢(2020年) – UNHCR Japan
※2 難民・国内避難民 | 国連UNHCR協会 (japanforunhcr.org)

【参照サイト】 The Refugee Dictionary – 70 years of protecting refugees – UK for UNHCR (unrefugees.org.uk)

Edited by Erika Tomiyama

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