社会とのつながりを。難民による美術館の案内ツアープログラム「Multaka」

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2017年のUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の報告書によると、世界の難民の約3分の2は、シリア、アフガニスタン、南スーダン、ミャンマー、ソマリアで発生している。なかでもシリアではもっとも多くの難民が発生しており、その数は630万人にも及ぶ。また、もっとも多くの難民を受け入れている国はトルコ(350万人)で、ドイツは世界で6番目に多くの難民を受け入れている(97万人)。

そんなドイツのベルリンにある4つの美術館および博物館(イスラム美術館、ベルリン中東博物館、リービーク・ハウス、ドイツ歴史博物館)が、シリアとイラクからの難民に館内ガイドのトレーニングを提供する「Multaka(ムルタカ)」というプログラムを行っている。 Multakaはアラビア語で「合流する地点」を意味し、美術館や博物館を多様な文化や歴史が交差するダイバーシティな場所にしたいという願いが込められている。

ガイドになるためのトレーニングを受けた難民は、自らの母国語で、同じシリアやイラクからの難民にツアーを行う。より多くの難民が美術館や博物館に訪れ、受け入れ国であるドイツとの社会的なつながりを育んでもらうことが、同プログラムの目的だ。

ツアーは、ドイツ、シリア、イラクの歴史的および文化的つながりに焦点を当てた内容となっている。たとえばイスラム美術館、ベルリン中東博物館ではシリアやイラクの工芸品に、リービーク・ハウスではイスラム教、ユダヤ教、キリスト教という異宗教間の交流に焦点が当たる。ドイツ歴史博物館では、第二次大戦後のドイツの復興がツアーの中心テーマとなり、シリアやイラクもまだ終わりではないという希望を難民に与える。

Multakaは好評を博し、オックスフォードのピットリバース博物館、オックスフォード科学史博物館でも類似のプログラムが始まった。パリのルーブル美術館も2019年9月時点で、同様のプログラムをどのようにフランスで取り入れるか、検討を重ねているという。

ルーブル美術館のイスラム美術部門のディレクターを務めるヤニック・リンツ氏は、「人々がイスラム教のことをテロばかりだと思わず、いかにしてイスラム文明に関する知識を深めてもらえるか、自問しました」と語る。ツアーの参加者は、ガイドである難民がもつ多様な文化的背景に触れることで社会の多元性を学び、それを受け入れていくだろう。

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【参照サイト】 Multaka