渡り鳥は違う環境を求めて海を渡る。毎年5,000万羽もの渡り鳥が南極、オーストラリア、東アジアという飛行ルートを渡るが、このルートを飛行する鳥たちの数は近年減少しつつあり、世界の中でも危機的状況にある。その原因は、臨港エリアの都市化により、鳥が餌を調達できる場所が減ってきているからだ。
都市化に伴う生態系の破壊を抑制し、渡り鳥の生息地を増やそうと、中国・天津港湾ではユニークなプロジェクトが始まろうとしている。
オーストラリア、中国に拠点を置くデザインスタジオのMcGregor Coxallが発表したのは、港湾エリアの埋め立て地を渡り鳥のための湿地保護区域「Bird Airport(鳥のための空港)」を作るという計画だ。この区域の建設は2017年の後半に始まり、2018年完成予定だ。
湿地は20ヘクタールの林に取り囲まれるため、渡り鳥は都市開発の影響をなるべく受けずに済む。長期間飛んで疲れた渡り鳥がここでゆっくり羽を休め、繁殖なども行うことができるのだ。中国、オーストラリア、そして地球全体のエコシステムの保全に大きく貢献する場になることだろう。
鳥空港でくつろげるのは鳥だけではない。都市林を囲む歩道や自転車道、池周りの道なども整備され、人々もこの緑地で一息つくことができる。都市に住む人間にとっても貴重な緑の広場となるだろう。また湿地を潤す灌漑設備には再生可能なエネルギーが利用されるため、環境に優しい仕組みにもなっている。
このプロジェクトによって、渡り鳥の研究の地として国際的な関心を集める中国の役割は今後ますます大きくなるはずだ。人間の経済活動によって失われた生息地も多いが、こうしてまた人の手により生息空間を復活させ、失われたものを取り戻す。健全な生態系のための、とても前向きなプロジェクトだ。