ホテルが宿泊客を逆レビュー。評価経済時代の新しいおもてなしの形「Art Series Hotel」

Browse By

オーストラリアのギャラクシーリサーチが実施したホテル宿泊客の行動に関する調査結果は、とても興味深い内容を示している。宿泊客による悪質行為の最も一般的なものは、備品を盗み(19%)、出発時にミニバー利用を申告しないこと(18%)だ。また、調査対象の30%が、裸体で窓際をうろつく(20%)、ホテル内における小規模な盗難(10%)など、何らかの形でマナーに反した行動をとっている。

年収90,000豪ドル(約750万円)以上の所得がある人の実に76%がホテルスタッフに無礼な態度を取り、富裕な人ほどホテルスタッフを見下す傾向があり、貧しい人の方が支払っていないアイテムを持ち去る可能性が低いこともわかった。また、一般的には女性の方が男性よりもわずかに振る舞いがよいということだ。

これらの結果を受け、オーストラリアのメルボルンにあるArt Series Hotel Groupは、ホテルのゲストをレビューし、高評価のゲストには部屋のアップグレードや無料ステイをプレゼントするという取り組みを試験的に始めた。

旅行口コミサイト世界最大手のトリップアドバイザーには、ホテルとレストランだけで4000万件を超えるレビューが掲載されており、ゲストがホテルをレビューするのは一般的だ。

しかし、Art Series Hotelでは、逆にホテルがゲストをレビューすることで、ゲストがよい振る舞いをすればするほど得をする仕組みを提供している。ホテルとしても、ゲストのマナーが良ければよいほど清掃などのオペレーションに割くコストが削減できるので、リワードを提供したとしても十分に元がとれるだろう。

既にAirbnbなどのホームシェアリングの世界では、部屋を貸すホストと部屋を借りるゲストが相互に評価を行うという仕組みが一般的になっているが、ホテルでも同様の動きが出てきた形だ。

タバコの吸い殻や食べた後のゴミがベッドの上に散乱。ホテルからのリワードが欲しいなら、そのまま部屋を後にするのはご法度だ。ゲストの行動は評価され、ポイントシステムを使用してランク付けされる。

よいレビューを希望する宿泊者は、部屋をきれいにして準備ができているときにドアの外にサインを置くなど、工夫もできる。さらにその上を目指すなら、リネンの交換回数を減らし、汚れたタオルを整頓して保管することだ。最高の行動をとった人には5つ星の評価が与えられ、無料での滞在もできる。

「去る鳥あとを濁さず」。ことわざで去り際の美しい立ち振る舞いを自然界の様子に例えてこのように言う。あくまで倫理観に訴える表現だが、このリワードシステムは、人々の振る舞いをよい方向へと変えていくための、とても実用的な取り組みだ。

【参照サイト】Art Series Hotel Group

FacebookTwitter