人口増加や工業化による水質汚染の問題は世界中で起こっているが、台湾はその中でも特に水質汚染が深刻な地域として有名だ。台湾では、水道水の飲用は5分以上煮沸させてからという基準があるが、高雄市のような水質汚染がさらにひどい地域になると、煮沸だけでは有害物質を完全に取り除くことはできず、生水を飲みたいのであればミネラルウォーターを飲むようにと推進されている。台湾では、水そのものの汚染に加え浄水施設の技術にも問題があるため、ここまで水質汚染が進んでしまったともいわれている。
この台湾に起こっている「深刻な水質汚染の現状」と「水質汚染を引き起こす要因として世界人口の増加が深く関係している」という認識を、もっと人々に広め訴えたいという思いから、「100%純汚水製氷所」という非常にユニークなプロジェクトが立ち上げられた。仕掛け人は、国立台湾芸術大学芸術学部の学生たちだ。
彼らは台湾にある河川や港など100カ所からの汚染水を集め、その汚水サンプルを凍結し、ポリエステル樹脂で固め保存、アイスキャンディーを作った。1カ所につき1個。合計100個にも及ぶこのアイスキャンディーは、一見、清涼感のある爽やかな色合いでとても美味しそうに見える。しかし、その一つ一つをよく見てみると、そのきれいな模様を形作るものは実は採取された水の中に混じっていた吸殻や網、プラスチックなどの汚物であることがわかりギョッとさせられる。
これら100個のアイスキャンディーは、それぞれポップでカラフルなパッケージに包まれており、その包装には汚水を採取した場所と水に混じっていた不純物の詳細が明記されている。
「下水で作ったアイスキャンディー」として発表されたこの作品は、Young Pin Design Awardにノミネートされ、今年5月に催された台北世界貿易センターのデザイン展に出品され注目を集めている。
水質汚染の現状を人々に訴えるための手法にはさまざまな方法が考えられるが、「100%純汚水製氷所」のように、アイスキャンディーという最もポピュラーで人々に愛される商品を使い汚染問題を提議する、というアイデアはとてもユニークでなおかつ直観的に伝わる優れた手法だ。
ポップでキャッチーなビジュアルでありながら、その中身にはおぞましいほどの現実が明確に刻印されている。この衝撃的なギャップは鮮明に記憶に残り、人々にとって忘れられないものとなるに違いない。
【参照サイト】Polluted Water Popsicles
(※画像:Polluted Water Popsiclesより引用)