環境破壊の行く末にある食事とは?残酷な未来を味わえる、絶滅体験レストランで見たもの

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もし、食材の生き物たちが絶滅してしまったら。もし、自分が出したゴミがどこかで生き物たちを殺していたら。もし、地球から森がなくなってしまったら。

もし、人類だけが地球に残ったとして、食べるものはあるのか。

普段の生活で私たちは、こうして地球のことを考える機会がどれだけあるだろう。現在、1年間で絶滅する生物は約4万種にのぼると言われている。人は、自分の生活が脅かされる体験をしない限り、なかなか日常を変える一歩を踏み出すことはできない。

2019年4月20日、このままだと起こりうる環境破壊が進んだ未来に残った食材を使ったコース料理やエンターテイメントで体験する「絶滅体験レストラン」が原宿のKawaii Monster Caféで開催された。

この「絶滅体験レストラン」は、クラウドファンディング「CAMPFIRE」で最終的に支援金額174万円、支援者数137人を達成して開催された。この企画構想に1年もの時間をかけ、やっとの思いで実現させた主催者WoWキツネザル氏は「怒涛の1年だった」と、クラウドファンディング開始当初の状況を振り返り、当日は歓喜のあまり涙する姿も見られた。

そんな主催者の熱い想いが詰まったこの企画。今回、イベントの中で特に印象的だった内容をご紹介したい。

絶滅体験レストラン

Photo by きるけ。

誰も体験していない「絶滅」という一番遠いものと、身近な「レストラン」のクロスオーバー

「人を変えるのは知識ではなく、体験だ。」

そう話す主催者のWoWキツネザル氏は、2年前にワオキツネザルが生息するマダガスカルに実際に行き、日本だとなかなか感じられない環境破壊の現状や、大好きな動物たちが絶滅に向かっている姿を見て、今までの価値観が全部壊れたという。そこから初めて地球のために動き出したが、活動をしていく中で興味を持っている人と持っていない人の差に驚いた。もともと司会者をしていたWoWキツネザル氏は、エンターテイメントの力を信じていた。そこで、今まであまりなかった環境保全とエンターテイメントをミックスしたイベントができないかと思い、この企画を立ち上げたという。

そして誰も体験していない「絶滅」という一番遠いものと「レストラン」という身近なものをクロスオーバーすることによって、今まで自分ゴトにできなかった環境破壊というものを身近に感じて欲しいという想いでショーは始まった。レストランで出される料理は、現代の多様性を表すものから、次第に食べるものがなくなる未来を表したものだ。

「絶滅体験レストランは、アカデミックなものではなく、ストーリーを重視しています。今日の体験を通して、人々の感情に訴えたいと思っています。」(WoWキツネザル氏)

シェフの森枝幹氏は、こだわりのポイントを「食べることで絶滅や環境破壊のことを感じてもらい『こうなったらやだな』と思ってもらうことができるようこだわっています」とコメントした。

司会のWoWキツネザル氏

司会のWoWキツネザル氏 Photo by きるけ。

多様性のある現代から、絶滅の未来へと向かう

最初のショーは生命の輝きと絶滅の悲しさを表現したパフォーマンス。現代の多様性を表しているショーで会場の雰囲気は明るく、和やかなものとなった。この時点ではまだ、私たちは多くの色とりどりの食材に囲まれている。

絶滅体験レストラン

生命の輝きと絶滅の悲しさを表現したパフォーマンス Photo by きるけ。

前菜「極彩色の贅沢なサラダ」は、現代の繁栄を表現している。

前菜「極彩色の贅沢なサラダ」は、現代の繁栄を表現している。Photo by きるけ。

続いて、メインが運ばれてきた。今から11年後の未来の海、最近問題になっている海洋汚染を表現した「希少なサーモンの温菜~漂流物を添えて〜」だ。川から流れたペットボトルはすべて海へと行き着く。人間にとっては便利なプラスチックは分解するのに400年かかるといわれており、自然にとっては厄介なものとなってしまった。

そんな未来のサーモンの温野菜に添えられたプラスチック製のグラスは、ウェルカムドリンクで使用されていたものと同じであった。その他にもビーツを調理した食べられるプラスチック片も皿を彩った。

「希少なサーモンの温菜~漂流物を添えて〜」

「希少なサーモンの温菜~漂流物を添えて〜」Photo by きるけ。

森林伐採を表現したイリュージョンマジックショーに合わせて運ばれてきた食材は、会場の人々を驚かせた。「地球最後の肉をつかった合い挽きハンバーグ」だ。2100年を想定したハンバーグの中身はなんと、アナグマやキジ、カラスなどの普段馴染みのない動物たちの肉。

「このまま環境破壊がどんどん進んだ2100年には、一体どんなお肉が私たちの食卓に並ぶのだろうか」会場の人々にそう思わせる、貴重な食体験となった。

「地球最後の肉をつかった合い挽きハンバーグ」

「地球最後の肉をつかった合い挽きハンバーグ」Photo by きるけ。

昆虫料理「生き残った者たちのリゾット」では、未来の虫の繁栄を表現している。

昆虫料理「生き残った者たちのリゾット」では、未来の虫の繁栄を表現している。Photo by きるけ。

イベントの終盤では、パフォーマンスも私たちに環境破壊の深刻さを訴えかけるものとなった。最後に出されたデザートは、もはや何もなくなってしまった地球を表現した「孤独のかたち」。ショーと食事の「体験」を通して、環境破壊について考えさせられる時間となった。

森林伐採を表現したイリュージョンマジックショー

森林伐採を表現したイリュージョンマジックショー Photo by きるけ。

最後の食事は、もう何もなくなってしまった地球を表現したデザート「孤独のかたち」。

最後の食事は、もう何もなくなってしまった地球を表現したデザート「孤独のかたち」。 Photo by きるけ。

我々は常に自然、動物によって生かされている

司会のWoWキツネザル氏は来場者に向けてこう訴えかけた。

「私たちはこれまで、多くの生き物を殺してきた。そしてそれはこれからも変わらないだろう。それは、無自覚だ。たとえばノート、洗剤。私たちの身の回りにあるものは、どのように作られ、どのように消費されるのか。コンビニでもらった袋や、誰かが飲んだペットボトル。私たちは、それらがどこへ行くのか見逃しがちだ。」

「我々は常に自然、動物によって生かされている。それを忘れ、一方的な搾取を続けたとき、絶滅するのは彼らだけではない。我々もその一部なのだ。」

そうして最後に、「ずっとやりたかった夢がある」と、ステージの前に人々が集まった。「絶滅危惧種の動物たちと一緒にステージで、We Are The Worldを歌いたい。自然も、動物も、私たちも、僕たちはひとつだということを伝えたい。」そんなWoWキツネザル氏の想いで歌われたWe Are The Worldにより、会場はひとつになった。

曲を歌い終えたWoWキツネザル氏は「またもっといい未来で、この歌を歌いたい」と、ステージを締めくくった。

絶滅体験レストラン

Photo by きるけ。

すぐに変えなくてもいい。今の延長線でできることから

みんな、地球のために生活を捨てれるか?「生活を捨てる」と言われたら、それは長続きしないだろう。でも、ほんの少しだったら?自分らしく、できる範囲で、そしてその「できる範囲」のことを続けていくこと。そんな持続可能な日々の生活で、地球を愛することを行動で表すことができる。他の誰かではなく、あなたが変わろう。自然を愛する者のパレードにかえていこう。

イベントの中で言われていた言葉だ。WoWキツネザル氏は、イベントが始まる前に、この絶滅体験レストランを通して来場者に何を感じて欲しいかという質問に対して、こう答えていた。

「このイベントが終わった後すぐに、ビーガンになって欲しいとかプラスチックを使わないで欲しいなどとは思ってはいません。今の暮らしの日常の延長線上で、今使っている洗剤がなくなったときに少しでも認証マークのあるものを選ぼうとか、今までエコバックは持っていなかったけど持ってみようとか、一歩、少し先に進めるきっかけになる今日にしたいんです。その範囲を繋げられるように、第2、第3回と、レストランだけでなく、たとえばミュージアムやギャラリー、プラネタリウムなどのフェスもやっていきたい。そのすべてのきっかけ、始まりが今日なんです。」

絶滅体験レストランは、まだ彼らのはじまりの一歩に過ぎない。多くの人々が「体験」を通して環境破壊を自分ゴト化し、少しずつでも日常を変えていく。そのきっかけとなるのが、この絶滅体験レストランなのだ。

【参考サイト】絶滅体験レストランクラウドファンディングサイト
画像提供:絶滅体験レストラン