現在、世界的な問題となっている大気汚染は、私たちの身近でもさまざまな健康被害を起こしている。特に、急激に産業化する都市部の汚染が顕著であり、2018年のWHOの発表では毎年700万人が大気汚染が原因となって死亡しているという。
できるなら誰でも空気のきれいな場所に住みたいとは思うものの、やはり都市部の便利さにはかえられない。それに、大気汚染の原因となる自動車や工場での生産活動は同時に人間の生活を豊かにするものであり、止めてしまうことへのジレンマもある。私たちは、大気汚染とどのように向き合っていけばいいのだろうか。
IDEAS FOR GOODでは、これまで世界各国の大気汚染に対するユニークな取り組みを紹介してきた。将来の行動につながるきっかけとして今回は5つの記事を紹介したい。
クリーン×快適な都市へ
01. ベルリンの緑の壁「City Tree」
ドイツの首都ベルリンで開発された「City Tree」は、空気中の二酸化炭素や窒素酸化物を酸素に変えることのできる巨大な苔の壁だ。
周辺環境の情報をデータ化して分析するIoT技術を取り入れ、気候の変化に関係なく都市に暮らす人がきれいな空気を吸えるような工夫がされている。
未来を担う人々の健康を守る
02. 子どもに大気汚染の注意喚起をする「The Urban Canaries」
大気汚染の危険性を子供たち自身に知らせるため、ニューヨークでは子供向けに開発された大気汚染度計測ガジェット「The Urban Canaries」が誕生した。
小さなカナリアは汚染を感知し、LEDライトで子供たちに警告してくれる。大気汚染を避けるため、これから子供から親へと情報を伝えていくこともあるだろう。
03. ベビーカーの高さで乳幼児を守るIoTクッション「Brizi」
乳幼児と外出する際にベビーカーは必須だが、実はベビーカーに乗る赤ちゃんの高さの空気中の汚染物質レベルは非常に高い。そこで開発されたのが、ベビーカーに枕のように設置し、空気中の有害なガスをろ過して高機能ファンフィルターから新鮮な空気を出し続けるIoTクッション「Brizi」だ。
ロンドン生まれのBriziは、子供が呼吸する範囲をクリーンに保つことで未来を守っている。
大気汚染の原因からの脱却
04. 空気を浄化するスモッグフリー自転車
深刻な大気汚染が問題になっている中国では、オランダのエコイノベーターRoosegaardeと共同でスモッグフリー自転車が開発された。街中を走るだけで汚れた空気を浄化していくスモッグフリー自転車には、ユーザーを増やすことによって、かつて中国のアイコンであった自転車文化に回帰したいという願いも込められている。
05. 車から電動自転車へのアップグレード
アメリカ、サンフランシスコのサイクルショップ「The New Wheel」は、中古車を買い取り、そこで顧客が得たお金で新しく電動自転車を購入してもらうというトレードプログラムを開始した。これにより、便利だが値段が高いことがネックだった電動自動車の悩みを解消するというのだ。
坂が多く自転車の通行がしづらい地域で、電動自動車は新たな移動手段として脚光をあびはじめている。
まとめ
上にあげたように、世界では大気汚染への先進的な対策が多く行われているが、個人レベルでできることは何か。環境保全に関する議論で「大気汚染には、私たちひとりひとりが取り組まなくてはならない。」という問題提起のみに終着しがちなように、答えを出すことは容易ではない。
忘れてはいけないのは、大気汚染を引き起こすのも、その被害を被るのも私たち自身だということだ。その事実から目をそらさなければ、大気汚染が日々の生活にいかに密接に関係しているかを思い出せる。さまざまな事例を参考に、クリーンな方向へ少しずつシフトしていこう。