満開の桜。道端にそっと咲いていたタンポポ。甘い香りに誘われ立ち寄った花屋さんで買った、一輪のバラ。可憐な花々たちは、慌しい日常を生きる私たち現代人の心をそっとほぐし、日常を彩ってくれる。
また花は、太古から現代に至るまで、世界中のアーティストたちに寄り添い、ひらめきやアイディアを与えてきた「ミューズ」でもあった。William Amor氏は、そんな美しく咲き誇るミューズに魅了されたアーティストの一人だ。
フランスを拠点に活動する彼が作り出すのは、花々のオブジェ。さまざまな色で彩られた、透き通るような花びらはどれも繊細で、一つ一つが美しい。驚くべきは、この花々がすべて廃棄されたビニール袋からできているということだ。
美しきミューズは、他とはちょっと違う、特別なひらめきを彼に与えたようである。
Amor氏のアートプロジェクトはフランス語で”Les Creations Messageres”、「メッセージが込められたクリエイション」と名付けられている。その名のごとく、美しいだけではない花々には、アーティストの深い思いが込められている。Amor氏が作品を通して世に呼びかけているのが、プラスチック廃棄の問題だ。
自身のウェブサイトで、彼は以下のように語っている。
「打ち捨てられたビニール袋からできた美しい花々たちが、私たちに語りかけていることとは何でしょうか。それは、プラスチックによる汚染問題というダークなテーマが、カラフルな花飾りという美しい姿に”変身”を遂げられるのだ、ということです。
とても繊細で、まるで生きているのかのような花々は、私たちが日々纏うファッションの世界や、デザイン・アートの世界、その他あらゆる日常の風景を彩ってくれるでしょう。花々は美しきメッセンジャーとして、私たちに大切なことを語りかけてくれるのです。」
一つ一つのプラスチック袋には物語があるという考えから、Amor氏は自身の作品を「プラスチック・ストーリー」と呼んでいる。また、彼のインスタグラムには、「どうして私を捨てたの?」「私の夢は、花に生まれ変わること」という台詞と共に、廃棄されたプラスチック袋の写真をアップするなど、世の中に鋭いメッセージを発信している。
さらに彼は、フランス国内で要らなくなったプラスチック袋やメイクブラシを使って自分だけのオリジナルフラワーを作るワークショップを開催するなど、人々と直接触れ合い、対話をすることにも積極的だ。
今回のAmor氏のアート作品や、噛み終わったガムからプラスチック製品を作る取り組み、さらにはリサイクル可能なプラスチックを釣るボートツアーなど、一見「もういらない」「使えない」モノに新たな命を吹き込むアイディアは、実は世界中にあふれているのかもしれない。
あなたもぜひ、身の回りにある「いらないモノ」に目を向けてみてはどうだろうか。
【参照サイト】LES CREATIONS MESSAGERES – William Amor
(※画像:William Amor – Instagramより引用)