SNSの中の切り取られた華やかな世界では、アプリで加工された綺麗な顔やモデルのような華奢なスタイル、誰もが羨むブランド物などの写真や情報が、日々絶えず波のように流れてくる。誰が、いつ、どこで、何をしているのかが即座に分かると共に、他人との違いを強く意識させられ自尊心が傷つけられてしまう人もいるだろう。
英王立公衆衛生協会(RSPH)の調査によると、過去25年間で心の病気を患う若者が70%増加したメンタルヘルス問題の原因は、SNSが原因かもしれないという。SNSはタバコやお酒よりも依存性が高い傾向にあり、依存によってうつや不眠の悪化に繋がることもあるのだ。
スウェーデンでも同様に、若者のメンタルヘルス問題は根深い。10代がSNSに費やす時間は1日平均5時間。SNS利用者の約30%の女の子が劣等感を感じ、50%が自分の容姿にコンプレックスを感じているそう。
そんな若者の状態を見かねたスウェーデンの大手保険会社Länsförsäkringarが、社会へのメッセージとして「#ImPerfect」と名付けられた白いTシャツをつくった。
なんの変哲も無い、白いTシャツ。これを若者の羨望の対象となるインフルエンサーたち(俳優、ロックスター、デザイナーなど)に着用してもらった。
Tシャツは着こなす人によってアレンジされ、首元と袖がアンバランスになっていたり、ある部分が破かれていたりと“完璧”なTシャツとは言い難い。彼らには、社会へのムーブメントの広告塔として、イベントやそれぞれのSNSで披露してもらったのだ。完璧だと思っていたSNS上のスターたちが、完璧主義に異を唱える姿はきっと多くの若者に気づきを与えただろう。
世界各地のメディアで紹介された結果、スウェーデンの人口の約4倍にあたる4,000万人にリーチすることに成功した。大きなムーブメントとなったため、学校にも注目され、授業で若者のメンタルヘルスとSNSの問題が取り上げられることもあったという。
SNSで人と比べることに疲弊してしまった人、いいねを貰うことに躍起になっている人にぜひこの活動を知ってほしい。「#ImPerfect」という言葉の通り、一見欠点に見えるようなことも含めて、それぞれの人は完璧であり、自分を愛す資格があるのだ。こうでなければいけないという固定観念は捨て、自分らしさを大切にしようという強いメッセージが感じられる。
【参照サイト】Länsförsäkringar (insurance company) – #ImPerfect case study
【参照サイト】英王立公衆衛生協会 RSPH