むくみを防いで「慢性静脈不全」を治療する、イスラエルのスマートソックス

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夕方になると、足がむくんで靴が履けない。靴下のあとが取れないほどむくんでしまった。長時間同じ姿勢でいたり、水分が不足していたりすることが原因でおこるむくみには、多くの人が悩まされているだろう。これは、血液中の水分が必要以上に血管の外にしみ出し、皮膚と皮下組織内に溜まっている状態だ。

そんなむくみが初期症状として出る「慢性静脈不全(まんせいじょうみゃくふぜん)」をご存知だろうか?慢性静脈不全とは、静脈の還流障害(血液の逆流を防ぐための弁が壊れるなど)が慢性化し、うっ血することでおこる病気だ。なんと一般人口の40~50%の人におこっており、そのうち5%が皮膚潰瘍に進行する。主にむくみ、腫れ、痛み、こぶ、湿疹、色素沈着や潰瘍などの症状を伴い、最悪の場合、手術も必要だ。適切に治療されない場合、切断、肺塞栓症、脳卒中、さらには死につながる可能性のある危険な病気である。

そんな身近に潜む病を治療するため、イスラエルのスタートアップElastimed社が、足の血液循環を改善する着脱が簡単なスマートソックスを開発した。

慢性静脈不全を治療するスマートソックス

Image via Elastimed

ElastiMed社のウェアラブル医療機器であるスマートソックスは、ふくらはぎに巻きつける形で1日中着用するように設計されている。電場によって収縮する技術を使ってふくらはぎの筋肉の自然収縮を模倣した動きを行い、脚から心臓への血液の循環を助けるという。

慢性静脈不全の最も一般的な治療は、圧縮ストッキングなど使う圧迫療法である。しかし、ストッキングの着脱が難しく、不快なのが難点だった。米ミシシッピ・メディカル・センター大学とリバー・オークス病院の2007年の研究では、圧縮ストッキングで慢性静脈不全の治療を受ける患者のうち、63%はストッキングをまったく使用しなかったか、試用期間後にストッキングを使用しなかったことが判明している。そのため、ElastiMed社は快適で装着しやすく、日常生活に支障のない軽量なスマートソックスを開発したのだ。

慢性静脈不全を治療する圧縮ストッキングやウェアラブル装置の市場は、年間推定22億ドル。多くの需要が見込まれるとElastiMed社は考えている。同社は現在、臨床試験を受けており、欧米で規制当局の認可申請を行い、年内の販売を望んでいる。

このスマートソックスをきっかけに、誰もが発症するリスクを持つ慢性静脈不全について知り、改善できるデバイスがあることを知って欲しい。そして近年、医療技術が著しく進み、ロボットが手術を手伝ったり、患者の体内の様子をAR画像で事前に把握できたりするため、時間短縮にも繋がり、医師と患者の負担を減らすことに成功している。少しでも多くの人を救おうと発展し続ける医療IT技術の今後に期待したい。

【参照サイト】Elastimed
【参照サイト】Compliance with Compression Stockings in Chronic Venous Disease*
【参照サイト】むくみのメカニズム

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