長距離フライトに搭乗する際は、飲食に事欠く心配はない。それは、機内の行動範囲や物資の調達が制限されるため、乗客の快適さや健康を維持するために、航空会社が万全の準備をしているからだ。注文されてから作るレストランとは異なり、機内食は地上で作り終え、人数分しっかり揃えてから離陸する。しかし乗客の中には食欲がないか、眠っている人もいることから、多くの機内食は手つかずで残り、廃棄されるのが常だ。
また、旅にトラブルはつきもので、天候不良や航空機のメンテナンス等で、フライトが急遽キャンセルになることもしばしばある。そうなると、搭乗予定者全員分の食事が廃棄の対象になる。航空会社が出す廃棄物の量は年間約500万トンで、その大半が食べ物だ。
一方で、世の中にはさまざまな理由から、明日の食事にも不安を感じながら暮らす人々がたくさんいる。これは何も世界の貧困地域の国々に限ったことではなく、世界最大の経済大国アメリカでさえも、実に4100万人が安定した食べ物へのアクセスがないという状況だ。このいびつな食料事情を改善すべく、立ち上がったのがオーストラリアの非営利団体「OzHarvest(オズハーベスト)」である。
同団体はブリスベン空港と協力し、毎年48万人分のファーストクラスの機内食を回収する。そして、ボランティアスタッフが切に食事を必要としている人々に無償で届けるという。1日に回収する重量は、400キログラムを超え、各チャリティー団体を介して分配する。
オズハーベストは他にも、廃棄予定の食品ばかりを売るスーパーマーケットをオープンしている。まだ食べられる食料が廃棄されているのは、航空業界だけではないのだ。
国連食糧農業機関(FAO)によると、世界中で年間約13億トンもの食料が手を付けられずに捨てられているという。これは、客から注文があった際に、品切れを防ぎすぐ出せるように、在庫を多めに抱えておくことが原因の一つにある。日本の状況をみると、食料自給率は39%と極めて低い数値であり、輸入に大きく依存しているが、一人あたりの食料廃棄率は世界一だ。
ごみの分別やリサイクルなどさまざまな取り組みを行う日本が、何故このようないびつな状況にあるのか。これは、日本の「もったいない精神」を、「おもてなしの精神」や「利益優先主義」が上回っている可能性が考えられる。
日本では、ごみの捨て方やリサイクル等に関しては、法律などで徹底されている。食べ物を単に有機廃棄物とせずに、食料廃棄物という定義づけを行い、機内食なども無駄にしない基準を設け、可能な限りリサイクルを義務付けることも必要かもしれない。
【参照サイト】Ozharvest – FOOD-WASTE BACK TO WORK LUNCHES
(※画像:OzHarvestより引用)