企業の社会的責任や環境への配慮が求められる昨今だ。壮大なテーマに言及せざるを得ない企業は、茫洋とした理念を掲げている場合が多い。その理念をより具体的かつ身近なかたちに落とし込むことで、まずは小さなことから始められるというメッセージが人々に伝わると思う。例えば持続可能性を意味するサステナビリティという言葉があるが、一日一回この言葉を意識するようにできないだろうか。
デンマークに拠点を置く会社Sproutは、毎日の中でサステナビリティを感じられる、面白いアイテムを開発した。それは、植えられる鉛筆ことSprout pencilだ。鉛筆が短くなり、もう使えないからと捨てたことはないだろうか。Sproutはその行動に待ったをかけ、削ってないほうの端を下にして鉢に植えることを提案する。そして手入れをしていると、1~4週間ほどで芽が出る。捨てられるはずの使い残りが次の命を育むという、目に見えるサステナビリティの象徴だ。
種明かしをすると、この鉛筆の端はカプセルになっていて中に植物の種が入っているのだ。カプセルには生分解性があり、種はバジル、勿忘草、カーネーションなどいろいろな種類がある。色鉛筆としても利用でき、色は8種類から選べる。タイムならピンク、ヒナギクなら黄色など、植物に合わせた色が用意されているそうだ。
さらにいいのが500本以上注文する場合、鉛筆の側面に刻む文字やパッケージのデザインをカスタマイズしてもらえることだ。このカスタマイズサービスに注目した企業が、プロモーションに活用している事例がたくさんある。サステナビリティを大切にしているという企業のメッセージを伝えるため、カンファレンスや新製品の発売といったタイミングで人々に配るのだ。
例えばトヨタはカンファレンスにて、TOYOTA ENVIRONMENTAL CHALLENGE 2050(トヨタが挑戦する環境問題2050)と書かれたパッケージと共に鉛筆を配布した。コカ・コーラは、コカ・コーラ ライフを発売したときに「自然らしさ」という哲学に合うこの鉛筆を配布。イケアはサステナビリティレポートを始めたときに従業員に配布した。他にもヒルトンやセーブ・ザ・チルドレンなど、さまざまな業界で取り入れられている。
企業の導入事例をいろいろ紹介したが、個人ももちろん楽しめる。お母さんやおばあちゃんから、子供への贈り物として渡すとすばらしいと思う。この鉛筆から育つ植物は、自然の小さな姿だ。その育ち方に一喜一憂していたら、環境保護のことは何もわからなくても、軽々しく捨てられない生き物があることが見えてくると思う。
【参照サイト】Sprout World
(※画像提供:Sprout World)