痴漢やストーカーの被害にあったことのある人は少なくない。警察庁によると、2017年には全国の警察に寄せられたストーカー被害相談数は23,079件にのぼり、統計を始めた2000年以降で最多の数となった。近年は駅で目をつけたり、SNSで情報を集めてストーキングしたりするなど、被害者と直接面識のない人が加害者となるケースが増加傾向にあるそう。
痴漢やストーカーといったセクハラ行為は日本だけでなく、世界中で問題となっている。イギリスの国勢調査によると、昨年だけで85%の女性が公共の場でセクハラを経験したという。また、ロンドン交通局は、公共交通機関でセクハラや暴行にあった女性のうちわずか10%しか報告していないことを明かしている。
そんな課題を抱えるイギリスでは、首都ロンドンの街中で最も安全な道をナビゲートしてくれる地図アプリ「Safe & The City」が2018年3月の国際女性デーに配信された。
ナビアプリはすでに多くあるが、そのほとんどが最短で目的地につくルートを教えてくれるものだろう。しかし最も速いルートが、女性にとって常に安全だとは限らない。
Safe & The Cityでは、警察の犯罪データを元に導き出された安全なルートを案内してくれる。また、実際に嫌がらせや暴行を受けた人が、次なる被害者を生まないためにどの地域でどんな事件に遭遇したかを報告できる機能もある。
地図には盗撮、ストーキング、猥褻行為、暴言や暴力などの報告された被害や、夜道を歩く際には街灯が少ない地域などがマッピングされている。
また、ナビゲート中に“危険度が高い”場所に近づくとユーザーに警告してくれたり、危険を感じた時にアプリのボタンを2タップするだけでイギリスの緊急用通報番号999に繋いでくれたりする。
Safe & The Cityのビジョンは、「性別、年齢、民族、信条に関わらず、誰もが安全だと感じられる権利を持つ世界」だという。今回のアプリの対象は主に女性だが、男性であっても被害を受けることはあるかもしれない。悪意のある加害者を見過ごすことなく、街のみんなが協力して安全なまちづくりを進めるにはぴったりのアプリだ。
普段からその地域にいる人だけでなく、海外旅行の際に治安が気になる人にもこのアプリは役立つ。異国の地でトラブルにあうと、楽しい旅も台無しだ。土地勘のない観光客でも、どの道が危険か分かるのは助かるだろう。
現在、Safe & The Cityは対象地域拡大のためクラウドファンディングに取り組んでいる。より多くの人が外を出歩く際に不安を感じなくなる社会の実現に向け、今後の活動に期待したい。
【参照サイト】Safe&the City LONDON
【参照サイト】Crowdfunder – Safe And The City
【参考動画】Youtube – Safe & The City Creating Safer Streets
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